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ドイツからの「直言」コーナー

連載「憲法研究者に対する執拗な論難に答える」はこちら(第一回第二回第三回第四回)。


2018年12月17日

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「話を聞く耳を持たない」と嘆いたのは、来年5月から皇位継承順位第1位の「皇嗣」となる人物だったが、沖縄県知事選挙(9月30日)で辺野古新基地建設ノーの民意を示した沖縄県民もまた、安倍政権に対して同じ感慨を抱いているに違いない。何を言おうとも「聞く耳を持たない」。12月14日、この政権は、辺野古沿岸部に土砂投入を開始した。沖縄県の玉城デニー知事は、「民意をないがしらにし、県の頭越しに工事を進めることは、法治国家そして民主主義国家において決してあってはならない。地方自治を破壊する行為で、本県のみならず、他の国民にも降りかかる」と怒りを込めた。「民意黙殺 越えた一線」(『朝日新聞』2018年12月15日付第2総合面トップ見出し)。県の埋め立て承認撤回を、国の機関が「私人」として国に救済を求めるという、行政不服審査法の裏技的利用で効力を停止させ、また、土砂搬出のための岸壁の使用許可を本部町がしぶるや、すぐさま自治体の許可不要の民間セメント会社の桟橋を使って土砂の搬出を行うなど、「「奇策」連発」(『東京新聞』12月15日付1面トップ見出し)による土砂投入だった。沖縄に対してこの国は法治国家ではなく、「放置国家」、さらには「法恥国家」として立ち回っている。

右下の写真は、沖縄の市民団体の方から譲り受けた「ジュゴンの文鎮」である。木彫りだが、ズッシリ重い。私の沖縄関係「歴史グッズ」の一つである。9月のゼミ沖縄合宿の際にも改めて体感した辺野古の海の美しさ。これが汚されている。埋め立て用土砂によって茶色に濁っていく辺野古の海が痛々しい。「日米同盟のためではない。日本国民のためだ」と岩屋毅防衛大臣はいうが、北東アジアにおける「安全保障環境」が大きく変わったいま、そんな一般的な理由づけでは多くのひとは納得させられないだろう。安倍政権は、辺野古の住民に危険を押しつけ、かけがえのない自然を遮二無二に破壊し、国土を傷つけた政権として歴史に記録されるだろう。

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ところで、先月18日、滋賀県長浜市の琵琶湖に面した会館「臨湖」で講演したが、その4日前、対岸の高島市にある陸上自衛隊饗庭野演習場で事故が起きた。総合戦闘射撃訓練をしていた第37普通科連隊第4中隊の隊員が発射したL16(81ミリ迫撃砲)の実弾1発が、約1キロ北の国道303号近くに着弾し、道路脇に停車していたワゴン車の窓ガラスを破損したのである。冒頭左の写真は、私の研究室にある米軍81ミリ迫撃砲のM301A3照明弾である(左は、60ミリM49A2榴弾)。事故を起こしたのは、長さ40センチで重さ4キロの、このような形の榴弾である。「すさまじいさく裂音で、命の危険を感じた」と車内にいた男性(71歳)は語っている(『毎日新聞』11月15日付)。事故原因については、迫撃砲の照準を、目標から右に22.5度ずれて設定したことによる「人為的ミスが有力な要因」(山崎幸二陸幕長)とされている(『朝雲』11月22日付)。

陸上自衛隊における、ごく普通の訓練で起きた事故である。普通科連隊の普通科中隊に所属する迫撃砲小隊の隊員の人為的ミス。L16は64式81ミリ迫撃砲の後継として90年代から装備されている。経年劣化はすすんでいるものの、今回は技術的問題ではないようである。ただ、自衛隊の現場では装備の旧式化によりさまざまな問題も起きていて、防衛予算が増えているといっても、部隊の現場が恩恵を受けているわけでは必ずしもない。少子化により自衛官の応募者が落ち込み(昨年は計画の79%)、巨大組織維持のために「定年延長」がなされようとしている(『毎日新聞』11月18日付)。人のレベルでの「老化」もさまざまなところに影響を及ぼす。必要な人員や設備、装備の更新が抑制されるなか、超高額のハイテク兵器が、トップダウンで導入される傾向がこの間、急速に進んでいる。その典型が「イージス・アショア」である。すでに直言「イージス・アショアの「もったいない」」でも詳しく論じた。

『軍事研究』誌は、自宅書庫に創刊号(1966年4月号)から52年分すべて保有しているが、そのイエローページの「市ヶ谷レーダーサイト」(かつては「六本木レーダーサイト」)は「業界」事情に通じており、「安倍総理の軍事常識は大丈夫か?」など、興味深い指摘に出会える。その2018年3月号では、「最近の装備の買い方は何か変」というタイトルのもと、「イージス・アショア」導入に対する厳しい批判論が展開されている。「体系的な装備計画が必須」にもかかわらず、「最近の装備選定は、政治家の思い付きによるトップダウンのものが多過ぎる」という指摘は鋭い。

直言「年のはじめに武器の話(その2)—変わる自民党国防部会の風景」では、自民党内からも、官邸主導の「トップダウン」に対して、「概算要求なしに予算が通るというのは時代の流れを感じるね」という皮肉の声があがったほか、「〔国防〕部会での事前報告がないというのはどういうことか。スタンドオフミサイルとイージス・アショアはどこで決まったのか」という野次も出たという。かなり不満がたまっているようだ。しかし、党内の声は外にはもれてこない。「イージス・アショアの単価はいくらか」という当然の質問に対しても、防衛省側は曖昧な答えに終始している。自民党国防部会の議員たちに対してさえこういう態度だから、いわんやメディアや国民に対してをや、である。役所が官邸に忖度して、党の部会にも情報を出さない。長年にわたり「政府・自民党」と呼ばれてきた国政運営の仕組みが、安倍政権のもとで大きく変容したことを示す一例だろう。財政の運用も同様である。

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『東京新聞』11月19日付から始まった「税を追う」シリーズは、「官邸主導で攻撃兵器選定」による「歯止めなき防衛費」の膨張を衝く。直言「年のはじめに武器の話(その1)—空母、爆撃機、ミサイル」では、「対外有償軍事援助」(FMS: Foreign Military Sales)の問題性を指摘しており、米国から「言い値」で、しかも納期もすべて米国政府まかせ、日本にこれ以上ないほど不利な条件で、高額兵器を買わされる仕組みを明らかにしている。

憲法86条は単年度予算主義を定めているが、財政法上、予算は5年まで分割できる。防衛省はこれを「後年度負担」として、これまで各種の高額兵器を購入してきた。安倍政権は、2015年に防衛費に限定した「防衛調達長期契約法」を成立させて、「分割払い期間」を5年から10年まで延長できるようにした。この裏技によって、ここ数年でFMSのローン残高は2018年度1兆1377億円と、5年前の約6倍に拡大している。米国製高額兵器に予算を圧迫され、苦しくなった防衛省は、国内防衛企業62社に対して、来年度に納品を受ける防衛装備品代金の支払いを最大で4年まで延期してもらえないかと要請し、企業は、「資金繰りに影響が出る」と反発しているという(『東京新聞』11月29日付)。「リボ払い」がかさみにかさんで、財政状態は火の車になっていく。2019年度に支払時期を迎えるローンは、国内産兵器分と合わせて2兆647億円で、同時に、支払額より4400億円多い2兆5100億円の新たなローンが発生する。防衛省は2019年度予算で、本年度当初予算の2.1%増となる過去最大の5兆2986億円を要求している(『東京新聞』同上)。

そうしたなか、国会が閉会したというこのタイミングで、防衛省が2018年度の第二次補正予算案として、過去最大規模の3653億円を要求していることがわかった(『東京新聞』12月13日付)。62社への支払い延期が無理となって、この急場を過去最大の補正予算で対処しようというわけである。滋賀県で事故を起こした迫撃砲など、現場の地味な装備については細く、長く使うことを求めながら、トップダウンの高額兵器には惜しみなく金をつぎ込む。無用かつ無意味な豪華・巨大戦艦を揃える「大艦巨砲主義」の変型版というところか。それが国の財政構造を大きく歪めている。「放漫運営」としか言いようがない。

このところ一般の関心もひくようになってきたのが、護衛艦「いずも」の空母化とF35Bの導入である。私は、18年前に直言「「攻撃型空母」を持つ日本」を書いたが、当時は8900トン級輸送艦「おおすみ」の空母改造構想にとどまっていた。ちょうど10年前には、16DDH(平成16年ヘリコプター搭載護衛艦)「ひゅうが」がまるで空母のようで、いずれこれに「強襲輸送機「オスプレイ」が並ぶのも「夢」ではないだろう。」と「予言」したが、現実はオスプレイを飛び越してF35Bまできている。安倍政権ならではの「スピード感」である(ほめていない!)。

従来、自衛隊を合憲とする肝の概念である「必要最小限度の実力」。これを超えるものとして例示されていたのが、①大陸間弾道弾、②戦略爆撃機、③攻撃型空母である。今回、「多用途運用護衛艦」というネーミングをあみだし、どこまでも「攻撃型空母」ではないと政府は言い張っている。今年はじめの「直言」では、「攻撃型空母」についてこう書いている。「きわめて大きな破壊力を有する爆弾を積めるなど大きな攻撃力をもつ多数の対地攻撃機を主力として、それに掩護戦闘機や警戒管制機などを搭載して、これらの全航空機を含め、それらが全体となって一つのシステムとして機能するような大型の艦艇」であるが、「もともと空母自体に防衛用と攻撃用の区別はなく、空母自体が「戦力」にあたるというべきである(水島朝穂「憲法9条」『基本法コンメンタール 憲法(第5版)』(日本評論社、2006年)51頁参照)」と。

先週、12月11日、前述の自民党国防部会と安全保障調査会の合同会議において、護衛艦「いずも」改修による事実上の空母化が了承され、新たな防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」にもそのことが明記されることになった。その際、「専守防衛の範囲内」という確認文書がつくという。それでもなおかつ、実質的な「攻撃型空母」ではないのかという疑問はたえず出てきているようだが、自民党内部でどんな議論がされたのか、今回はキャッチすることができなかった。

岩屋防衛大臣は、「他に母基地がある航空機を時々の任務に応じて搭載するのは、決して攻撃型空母に当たらない」という「解釈」だが、「多用途運用護衛艦」と呼ぼうが呼ぶまいが、垂直離発着(STOVL)機のF35Bを搭載する能力があり、かつ「必要に応じて」搭載する艦は「攻撃型空母」と言わざるを得ない。なぜなら、F35Bは、領空侵犯対処を軸とした「専守防衛」の理念から大きく逸脱する攻撃型の戦闘爆撃機だからである。まさに従来の政府解釈からしても違憲の「戦力」となる。それを「常時搭載しない」ことを唯一の理由にして、「攻撃型空母」ではないというのは、屁理屈にもならない無理屈の域に入っている。

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なんでここまで、強引な手法がとれるのか。それは、安倍首相がトランプとの約束を重視し、官邸がそれを軸にものごとを決めているからである。トランプに高額兵器を買わされたため、その辻褄合わせで最大規模の補正予算を組まされ、防衛計画の変更、さらには「防衛計画の大綱」まで変えていく。それぞれに議論が必要なのに、すべて省略され、「高額兵器の爆買い」だけが進む。その「成果」は、トランプが対日貿易赤字について「巨額だが、減ってきた」と一定の評価をしたことにもあらわれている。トランプは、安倍首相の努力でF35を多数購入するとして、「感謝を表したい」と語ったという(『毎日新聞』12月1日付)。だが、安倍政権は単にトランプの「圧力」に屈して、そうした高額兵器を買わされているのだろうか。むしろ、「トランプ圧」(外圧)を利用するという側面があるのではないか。

安倍首相は2020年憲法改正に向けて爆走を続けている。首相の思い入れ(思い込み)の強さと勢いは変わらないが、「友だち重視」の人事が裏目に出るという皮肉な現象も生まれている。人望のない側近や「友だち」を「適材適所」として就任させても、かえってそれぞれの現場で反発をかい、ブレーキ役になってしまうという皮肉な現実が随所に生まれている。特に憲法改正問題の最前線に、下村博文(憲法改正推進本部長)、新藤義孝(衆院憲法審筆頭幹事)、稲田朋美(筆頭副幹事長)という、とりわけ人望のない最側近をあえて投入したことのマイナス効果は著しい。安倍首相の焦りと「不徳の致すところ」がよく出た人事だった。

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なぜ、こうまでして憲法改正に突き進むのか。とにかく憲法9条2項のハードルを突破したい。これに尽きる。9条に自衛隊を明記する「加憲」をしても、「何も変わらないからね」と、赤ずきんちゃんのおばあさんの声色まねた狼のようなやり方で、9条2項の規範力を奪おうとしている。その向こうには、日本側の事情として、「普通の国」の「普通の軍隊」を持ちたいという衝動がある。自民党2018年案9条の2では、「必要最小限度の自衛力」という今までの政府解釈ではなく、「必要な自衛の措置」という書きぶりである。これでは、空母もF35も「最小限度」は超えるが、「必要な自衛の措置」なので合憲ということになってしまう

安倍首相が自衛隊を「普通の軍隊」にしたいという衝動はさまざまなところにあらわれている。7月の西日本豪雨被害があまりに大きかったために、安倍首相はフランス「外遊」を中止した。7月4日のパリ祭に参加して、陸上自衛隊第32普通科連隊長を先頭とする陸自パレード部隊が、他国の「普通の軍隊」とともにシャンゼリゼ通りを行進するのを「閲兵」するのを楽しみにしていた節がある。だから、ギリギリまで「外遊」にこだわり、災害対応の先頭に立つという姿勢が感じられなかったのではないか(「赤坂自民亭」はその副産物)。

「普通の軍隊」になるために、米軍の世界戦略の一角に、あえて前のめりで組み込まれていく。そこでは、一定の地域を担任することまで想定されている。将来的に、自衛隊は、米アフリカ軍に代わってこの地域の軍事管理をしていくのではないか(すでにジブチに「日本軍基地」が存在する)。集団的自衛権の行使の合憲解釈や安全保障関連法の狙いは、日本と日本周辺の狭い地域の問題ではない。尖閣諸島や北朝鮮対応が理由になっているが、むしろ目標はずっと先にある。水陸機動団は尖閣諸島などの「強襲上陸作戦による島嶼奪還」ではなく、「海上自衛隊艦艇によって作戦目的地沖まで急行し、海洋上の艦艇から海上とその上空を経由して地上の作戦目的地点に到達し各種任務を遂行する部隊」と定義されている(『軍事研究』2018年7月号北村淳論文参照)。周辺事態法は重要影響事態法となり、もはや「日本周辺」や「極東」のしばりはなくなったので、「作戦目的地点」は理論上、地球の裏側もありうる。空母「いずも」にF35Bを搭載するようになれば、米軍のF35Bが着艦して給油をして飛び立つという共同運用も可能となるが、さらに空母「いずも」を運用していけば、対空防御力や補給支援能力なども必要となり、日本自身が「空母機動部隊」を複数もつ必要性も出てくる。F35Aは空自所属だが、F35Bは海自という棲み分けが運用上必要になってくれば、将来的には「自衛隊」そのものの組織のありように連動していき、「普通の軍隊」への方向が進む。その方向を進めるためにも、「加憲」によって、憲法9条2項の無意味化(規範力の喪失)をはかることが必要になるわけである。

安倍政権は安全保障関連法とともに、防衛省設置法12条を改正して、背広組の統制機能(「文官スタッフ優位制度」)を弱化させ、制服組(とりわけ「海」)の意向を官邸に直接つなぐようにしたことも大きい。安倍首相のお気に入りの河野克俊統幕長の定年延長を何度も繰り返し、2019年5月27日までその地位に付けておくという、自衛隊史上かつてない例外人事をやって、「普通の軍隊」化を進めている。高額兵器の「爆買い」や「いずも」空母化の背後にも、河野の影が見える(「首相動静」欄を見れば、河野統幕長と会う頻度がすごい)。河野は10年前、海幕防衛部長時代の「あたご」事件のまずい対応で「降格」したものの、トップに躍り出た。河野のような「政治的軍人」の活用も安倍政権の特徴である。また、公文書改ざんなどで当然辞任していなければならない麻生太郎財務大臣を6年もその地位につけていることに象徴されるような歪んだ人事。「人の金」を粗末にする麻生大臣のもとで、この国の財政も税制も歪められていく。国政の「放漫運営」。安倍政権の「亡国」性である。

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「アシアナから」:カブールの職業訓練施設の一少年

Dieses Spielzeug wurde aus der Aschiana-Schule,
Kabul geschickt.

――「アシアナから」――

2002年のカブールの職業訓練施設で一少年が作った木製玩具。
肉挽器の上から兵器を入れると鉛筆やシャベルなどに変わる。
「武具を文具へ」。
平和的転換への思いは、いつの時代も同じです。

「直言」2002年6月10日