なぜ、憲法89条の改正か 1997/2/25


民党は1955年の結党以来、「自主憲法制定」を「党是」として掲げてきたが、連立政権時代、社民・さきがけとの関係で改憲のトーンを落としてきた。だが、昨年の総選挙で「単独政権」に復帰。今年1月の党大会で採択された運動方針案には、「現行憲法と現行諸制度との乖離を明らかにする」という一文が挿入された。そして、 2 月20日以降、党憲法調査会(会長・石橋一弥元文相)が開かれ、改憲論議が再始動した。 9条 2項が論議の対象となるが、今回、89条が前面に出ているのが特徴である。
橋本総理も、憲法公布50周年の日に、89条改正の必要性を説いていた。憲法89条は、「公金その他の公の財産は、公の支配に属しない…教育…の事業に対して、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と定める。学説の多くは、教育が「公の性質」をもつことを指摘したり、教育を受ける権利とリンクさせるなどして、私立学校への公費助成を違憲とは解していない。学生の多くを私学に依存している現状では、むしろ、私学への公費助成は欠かせない。このところ、私学への公費助成はお寒い限りである。助成の削減が、私学の学費値上げにも影響している。そうした仕打ちをなす政治家たちが、憲法89条改正を説いている。何かおかしい。党憲法調査会としては、条文と実態との食い違いについて、「国民にわかりやすい第89条をテコにしながら憲法改正に向けて世論を喚起したい考え」(『東京新聞』 2月15日付)という。これでは、私学助成のためではなく、9 条改正のダシにすぎないことがみえみえではないか。