オーデル大水害とドイツ連邦軍 1997/8/11


月から 8月にかけて中部ヨーロッパは洪水にみまわれた。ドイツ・ポーランド国境を流れるオーデル川の氾濫は半世紀ぶりといわれる規模だ。約640平方キロが水没した。水害専門の連邦技術支援隊(THW)や各地からの民間ボランティアが活躍したが、ドイツ連邦軍も一万人(注:その後三万人に増加)を投入。ヘリ12機をフル稼働させて、土嚢を搬送。堤防の決壊箇所に、兵士たちがバケツリレー方式で土嚢を積み上げ、さらなる決壊を防いだ。旧東独地域ではドイツ連邦軍への反感が強かったが、これで完全に人気を獲得したという。ブランデンブルク州のある市では、市長が救援部隊の将校(中尉)の名前を仮設堤防につけるほどだった(「マイヤー堤防」)。兵士が外国人に暴力をふるったり、ボスニアに派遣される兵士が演習中、強姦・処刑のまねをビデオ撮影して処分されるなど、このところ不祥事続きだったこともあり、国防相は大はしゃぎ。緑の党・同盟90に近い新聞までが、連邦軍の活動を手放しで称賛する記事を載せた(die taz vom 6.8.97)。 8月 6日、被災地で記者会見したリューエ国防相は、将来的に連邦軍をNATO域外にも災害派遣すること、軍の演習に災害派遣を組み入れることを明らかにした(http://www.germany-live.de/) 。ポスト冷戦時代の軍隊の「生き残り策発見」、というところか。
   共同通信のボン特派員は、「ますます開く独連邦軍と自衛隊の『差』」というコラムを書いた(『東京新聞』 8月 3日付)。ドイツは、ボスニア平和安定化部隊(SFOR)にすでに参加。アルバニアからの救出作戦も成功させたが、日本はタイへの自衛隊機派遣でもしくじった。今度の水害でますますドイツ軍への支持は上がった。「ますます開く日独の差」と共同特派員はいう。
   自衛隊がドイツ軍なみに紛争地域にも出動するように煽るかのような安易で無自覚な文章である。ここではっきりしたことは、災害派遣の位置づけをさらに上げていけば、軍隊の組織・編成・装備を維持する必然性はなくなることだ。。グリーンヘルメットに転換せよという主張はドイツにもある。自衛隊を国際災害救援隊にせよという筆者の主張(サンダーバード論)は説得力を増していると思うのだが(詳しくは、水島『武力なき平和--日本国憲法の構想力』 岩波書店参照)。

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