日本は「限りなく透明な存在」 1997/8/18


イ、ネパール、ビルマ、スリランカ、ベトナム。この半年の間に行った料理店である。いずれも私の通勤圏内(高田馬場、新宿)にある。北はモンゴルから、南はインドネシア、西アフガニスタンから、東は日本まで。アジアには全部で24ヵ国ある。これにフィジーやトンガといった太平洋諸国10ヵ国を加えると、「アジア太平洋地域」は計34ヵ国。世界人口の半数近くが住む。中国とインドが大口だ。東南アジア諸国連合(ASEAN)も注目株。約五億人が住み、将来重要な経済圏になるだろう。中国は、ASEAN諸国との紛争の平和的解決などをうたう「行動規範」の採択を目指している。ASEANは冷戦期に生まれ、アメリカのアジア政策の道具だったが、いまは独自の活動を始めている。社会主義ベトナムを内に抱え、ラオス、ミャンマー(ビルマ)を加えて「ASEAN9」として、カンボジアへの援助にも積極的だ。フィリピンがアメリカとの安保条約を破棄してから6年。返還された米軍基地跡の開発・発展が目ざましいという話を、取材から帰った雑誌記者から聞いた。1996年 4月の「日米安保共同宣言」。そこでは、「アジア太平洋地域」を日米二国の「死活的利益」の対象とした。日本はアメリカの軍事戦略に、無批判に追随・協力する態勢を一層強めている。「新ガイドライン」はその端的な例だ。その点、『琉球新報』 8月 4日付社説は鋭い。「アジア・太平洋地域への経済的な支援の額の大きさにもかかわらず、日本の存在感が薄いのは、その安全保障や外交政策が米国の影か、コピーとして見られているからであろう。影か、コピーなら米国と交渉した方が解決が早いとだれしも考えるであろう。日本がその存在と影響力を増すためには、米国のコピー外交・安全保障政策から脱する必要がある」。ASEAN諸国は、ベトナムをはじめ、アメリカの戦争政策の犠牲になった地域だ。「戦場から市場へ」。この地域は経済的に大きく発展しつつある。他方、環境問題など、開発や経済発展に伴う問題も生まれている。環境問題などをはじめ、日本がこの地域の一員として寄与できる分野はたくさんある。軍用機を飛ばして、力づくで自国民を「救出」することが「安全保障」なのではない。「新ガイドライン」でアメリカの軍事戦略に深入りしていけばいくほど、日本はアジアのなかで「限りなく透明な存在」になっていくだろう。