地方分権推進委3次勧告の傲慢さ 1997/9/8


HK衛星第1放送のBS討論「危機管理」という番組に出演した(9月 6日) 。水野清・行革会議事務局長らの議論は、この機会に何とか中央政府の権限強化を行いたいという一点に尽きる。そのなかで水野氏は、地方分権推進委で分権を進めているのだから、中央集権という批判はあたらないと私に向かって述べた。だが、これは違う。時間の関係で、発言できなかったので、ここで少し述べておこう。先日、地方分権推進委員会の第3次勧告が出されたが、そこでは、米軍用地の強制使用手続を国の直接執行事務にすることが勧告されている。現在、米軍用地の強制使用で地主が署名を拒否した場合、代わりに印鑑をつく「代理署名」や、「公告・縦覧の代行」は知事や市町村長が行う。沖縄県の大田知事がこの手続を拒否したことは承知の通りだ(後に受入れ表明)。知事等がこんな嫌な事務をやると立場が困難になるから、国が直接執行して楽にしてやるよ、というわけだ。だが、大田知事はこの手続を拒否することで、米軍基地が集中する沖縄の不条理を訴えた。この制度は、機関委任事務として、地方自治体に国が肩代わりしている事務で、それ自体がそもそも望ましいものではない。今回のやり口は、だからといって、国が全部やってやるよという形をとって、いわば地方の意見表明の機会を奪う効果をもっている。この点、沖縄の各紙は、「異議申し立ての機会奪う」(『琉球新報』 9月 4日付)、あるいは、「矛盾封じ込める勧告だ」(『沖縄タイムス』同)と厳しく批判している。とくに後者は、「邪魔なものは一切排除して思うままに基地を使用していく。表面的には民主的な手法でカモフラージュしているが、その内容は強権によって土地を取り上げていく点で米軍政下時代と何ら変わらないのだ」とまで断ずる。先の特措法改正は、収用委員会の地位と機能を空洞化した。今度の勧告が実現すれば、基地拡張のための土地の強制使用は実質上フリーパスで可能となる。だから、水野氏がやっている内閣機能強化は、こうした傲慢な「地方分権」という名の中央集権とセットで進めば、市民や自治体にとって実に「あぶない」ものとなることは明らかだろう。地方分権の時代に、なぜ、ここまで中央集権にこだわるのか。「普通の国」のありようが見えてくる。それにしても、テレビは神経が疲れますね。