なめたらあかんぜよ――名護からの報告 1997/11/17
12日夜、沖縄の名護市で、海上基地建設に関する住民説明会が行われた。13日未明、知り合いの地元紙記者から緊急のメールとFAXが入った。名護市東海岸の二見地区の説明会を取材した記者は、驚きと怒りを私に伝えてきた。この地区は過疎化が進み、高齢化率が4割という地区。そこの住民が勉強会を重ね、質問項目を準備して、防衛施設局の役人に理詰めで質問していく。ヘリの飛行は「集落や学校等の上空の飛行を避け、山間部を通る」とあるが、二見以北は山間部に集落が点在する。この点を鋭く突く質問には、「米軍と誠意をもって交渉していく」というだけ。普天間基地での事故や米軍関係犯罪のデータを求める住民側に対して、国側はデータが手元にないといういい加減さ。住民側の独自調査に基づく、農作物への潮害や、潮流の変化についての質問にも、問題はないの一点張り。「環境アセスメントもやらず、なぜ適地というか」という質問には、「建設に理解が得られるのなら、環境庁等と協議して対処する」という答え。まず賛成ありき、という国の傲慢な態度が見えた瞬間だ。この地区には、名護学院という知的障害者の施設がある。障害者は音や光に敏感だ。ヘリの騒音に耐えられない。この事実を国側は知らずに計画を進めていた。この記者が取材した住民の一人はいう。「二見以北は見捨てられてきた所だから、活性化の話はおいしく聞こえる。でも、実像が見えないふわふわした活性化策でこの地域が潤うのか。これ以上、犠牲にされるのは我慢できない」。全国一所得の低い沖縄県のなかでも貧しい北部の、さらに過疎・高齢化の進む地区に、札びらをちらつかせて巨大軍事基地を押しつける。13日、地元説得のため、田中角栄の弟子・梶山前官房長官も沖縄入りしている。こうした国のやり方に対して、この地区の住民のなかにゆっくりと、しかし確実に意識の変化が生まれていることを、記者は取材を重ねるなかで実感したという。すでに賛成派は2万人以上の署名を集めたというが、投票日を待たなければ分からない。その時、沖縄北部の人々は、政府だけでなく、無関心な日本国民に対しても明確な姿勢を示すかもしれない。住民投票という方法がもつ「危なさ」を考慮してもなお、この地域の住民の意見表明のギリギリの形態として、12月21日の住民投票の結果は大いに注目される所以である。