「ならず者」の低空飛行訓練とニッポン 1998/2/20


タリア北部のカバレーナで 2月 3日、米海兵隊 EA-6Bプラウラー戦術電子戦機がロープウエーのケーブルを切断。ゴンドラが墜落し、観光客など20名が死亡した。米軍は、レーダーに捕捉されずに侵入するため、30メートル以下の超低空を1100キロを超す速度で飛ぶ低空飛行訓練を世界各地で実施している(米軍マニュアルAFM51-40)。「ならず者国家」を攻撃するための訓練というわけである。だが、一体「ならず者」はどちらか。さすがに、同盟国のNATO諸国では高度 150メートル、速度も 830キロが上限である。イギリスのように部分的に30メートルを許可する国もあるが、その場合も3か所の戦術訓練空域に限定されている。カナダでの日常訓練は 150メートル。アラスカ州の訓練空域では、飛行ルート直下に人家がある場合、最低高度は 600メートルに設定されている。ドイツでもイギリスでも、人口密集地上空などや、週末と平日の午後11時から午前7 時までの訓練は禁止だ(国会図書館立法考査局『調査と情報』283号( 1996年 4月) 等参照)。だが、日本では、米軍が各地に勝手に低空飛行訓練ルート(オレンジルートなど)を設定し、好き勝手に飛び回っている。とくに広島県君田村は、北朝鮮によく似た地形ということで、頻繁に米軍機が超低空飛来する。ヨーロッパ諸国では低空訓練に関して、米軍は情報を公開しており、一定の規制に服している。あの広大なアラスカ州でさえ、人家があれば 600メートルである。だが、この狭い日本では、数十メートルで飛ぶことも稀ではない。なぜ、日本ではこんなに好き勝手にできるのか。航空法81条は運輸省令で定める「最低安全高度」以下で飛行してはならないとする。具体的には、人口密集地域では300 メートル以上、非密集地域では150 メートル以上である。粗暴な操縦の禁止(85条)や巡航高度(82条)も定められている。ところが、安保条約に基づく航空法特例法(1952年)3は上記を含む航空法 6章(57条〜99条の2 )の規定すべてを米軍には適用除外にしているのである。イタリアのような事故が日本で起きないという保証はない。外務省安保課は低空飛行について、米軍は安全対策を講じていると答えたそうだ。安保課は、どっちを向いているのか。米国防総省訓練局苦情処理課日本出張所と改名せよ。ブレジンスキー米元大統領補佐官は、軍事大国アメリカと経済大国日本の共同覇権のありようを「アメリッポン」と表現したという。普通は「ニホン」と発音する人も、オリンピックやサッカーになると、「がんばれ、ニッポン」と無邪気に絶叫する。日本でも大事故が起こる前に、低空飛行訓練は全廃すべきである。

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