4月から「ドイツからの直言」に 1998/11/9


事になるが、来年4月から2000年3月まで、早稲田大学在外研究員として、ボン大学で研究生活をおくることになった。世紀末ヨーロッパを現地でウォッチしながら、21世紀の平和と憲法の問題について、じっくり考えてきたい。この機会に読者の皆さんにそのことをお知らせしておきたいと思う。実を言うと、ここ数年間はまったく休みをとらず、アウトプットの連続で、自分の生命維持にも自信がなくなってきたところだった。たまたま所属する学部の特別研究期間制度(海外長期)枠が私にあたり、在外研究に出させて頂くことになった。
  大学に提出した研究テーマは、「冷戦後ドイツの安全保障政策の展開と基本法の運用過程の研究」。1949年のドイツ連邦共和国基本法(長らく「ボン基本法」と呼ばれた)は、来年5月に施行50周年を迎える。昨年施行50周年を迎えた日本国憲法と異なり、ドイツ基本法はたびたび改正されている(直近は本年7月22日の第46次改正)。1990年の東西ドイツ統一も、基本法23条(旧)に基づく編入方式が採用された。他方、冷戦後の安全保障環境の劇的な変化に対しては、基本法改正を行わず、連邦憲法裁判所の判決(1994年7月) をベースにした解釈・運用で乗り切っている(NATO域外への連邦軍派兵)。
  このような基本法の半世紀にわたる運用過程全般を実証的に跡づけ、その理論的問題点を析出することは重要な課題である。私も、ドイツの安全保障政策や対外政策の転換について分析を試みてきたが(『現代軍事法制の研究』参照)、今回の在外研究では、基本法施行50周年を契機に、歴史資料なども使って、より広い視野から研究してみたいと思う。そのため、制定過程とその関連諸資料が豊富にあるボン大学を選んだ。また、「ボン国際軍民転換センター(BICC: Bonn International Center for Conversion)」の利用も可能となる。日本ではあまり知られていないが、同センターは、世界中の巨大化した軍備を漸進的に民需に転換していく具体的方途についてデータ収集・分析を行っている研究所の一つである。ここで得た資料や情報は、私の平和法政策研究の実証的根拠ともなろう。
  なお、滞在中、連邦議会のベルリン移転や新首都ベルリン発足という歴史的瞬間にも立ち会えるので、この機会に、ヨーロッパの現実の動きについても色々と取材したいと思う。このコーナーも、「ドイツからの直言」として、現地の情報や日本の出来事へのコメントなどをまじえ、可能な限り定期的に更新していくつもりである。
  何かとご迷惑をおかけしますが、読者と聴取者(目の不自由な方にも定期的にアクセス頂いているので)の皆さんのご理解をお願いします。