『琉球新報』2002年9月6日付社説
台風16号直撃・侮り反省し次回の教訓に

 沖縄本島を直撃した台風16号に、県民生活は大混した。強い台風が、一昼夜も荒れ狂ったのは久々のことだ。しばらく、沖縄本島を強く襲う台風がなかっただけに、多少侮りをもっていたことを、今回は反省させられた。
 多くの県民は、自然が蓄え発散させるエネルギーの巨大さを、あらためて知らされるとともに、人間がひれ伏せさせることができない台風に、謙虚に立ち向かうことの重要さを再認識したことだろう。
 16号は“長逗留(とうりゅう)”だった。四日夜から沖縄本島を暴風域に巻き込み、抜け出たのは翌五日夜。一昼夜あまり県民を不安に陥れた。強い雨と風で家屋をたたき続け、屋外では樹木をなぎ倒し、道路を冠水させた。県民の恐怖度からすれば、「強い」台風程度ではなく、「非常に強い」「猛烈な」台風だった。それだけ備えを怠ったといえるかもしれない。
 実際、今回は奇妙な光景もみた。16号の上陸直前の夕方、那覇市内の道路はいつものように渋滞。ぎりぎりまで職場に残った結果だろうが、警報も発表され、バスも夕方には運行停止が伝えられているから、本来なら職場を早く切り上げる必要があったのではないか。
 運転不能になって立ち往生した車両や、トラックの転倒などがテレビ画面から見られた。
 過去幾度も直撃を予想されながら、はずれたことがあった。台風への侮りは、こうした積み重ねが“狼(おおかみ)少年”風になってしまったからだろうか。
 だが、台風への備えは常に万全であるべきだ。少しの油断が人命さえも奪う重大な結果へとつながる。備えた後に台風の進路から外れたことを、むしろ「幸運」ととらえるべきだ。
 16号は各地に大きなつめ跡を残した。夜が明ければ、新たな被害が確認され、さらに広がるだろう。だが、16号は県民に教訓を与えた。自然の猛威を侮ったことへの戒めと受け止め、次の備えに生かしたい。