緊急直言




「赤と緑にイエローカード」 1999/ 6/21


ュッセルドルフに買い物に行った。車で40分ほどの距離だ。5000人を超える日本人が住み、中心部には日本語の看板が目立つ。三越や日本の料理店も多く、書店も2つあった。道路沿いの一つに入った。思ったより広かった。入口のベストセラー・コーナーには、ギャハハッと笑う石原慎太郎の顔。いきなり不快。客への対応や、店のトイレを使うのにいちいち鍵を借りるところなど、真似する必要のないところだけドイツスタイルになっている。新刊本や雑誌、文庫、漫画、参考書など、品揃えは結構豊富。私が分担執筆した本も1冊見つけたが、値段をみて「目が点」になった。『週刊ポスト』が1200円もする。18年以上愛読している連載漫画「弍十手物語」を立ち読みしようとしたが、「ビニール本」状態(これって死語?)であきらめた。娘は値段の高さに驚き、遠慮がちに雑誌を1 冊だけ買っていた。娘の「指導」で初めてプリクラをやった(笑)。5マルク(約335円)なり。市内には、13日のEU議会選挙に向けた各党の選挙ポスターが張られている。目を引いたのは、野党の自民党(FDP) のポスター。「赤・緑にイエローカード」。赤は社民党(SPD)。緑の党との連立政権を批判したものだ。6日のブレーメン市(州)議会選挙では、SPDが勝ち、キリスト教民主同盟(CDU) も得票率を増やした。FDP は5%(議席配分の最低線)に遠く及ばず、議会から消えたまま。前回、一気に10.7%を獲得して議会進出したAFB(保守系ローカル政党)は、2.4 %に急落。消滅した。緑の党も激減。地方組織のなかには、EU選挙で自党への投票をボイコットする動きまであらわれた。政権参加後、この党の「存在の危機」はさらに深刻な段階に入った。なお、ブレーメン選挙で注目されたのは、60%という低投票率。日本に比べ、ドイツの投票率はかなり高い(80 %代が普通) 。州を構成するブレーマー・ハーフェンでは52%。ここでネオナチ政党(DVU) が1議席を獲得している。ブレーメンはSPDCDU の大連立政権で、中央政府との「ねじれ」が生まれている。政治不信のあらわれ方には、棄権と、過激政党への「やけっぱちの一票」(「抵抗選挙人」(Protestwaehler))とがある。DVUの1議席の意味は小さくない。続く13日のEU議会選挙では、「赤・緑」が「劇的な敗北」(General-Anzeiger)をきっした。SPDは1.5 ポイント減の30.7%、緑は3.7 ポイント減の6.4%。FDPは3.0%と、退場の「レッドカード」をくらった。一方、野党のCDUCSU(バイエルン州のキリスト教社会同盟) の合計は、前回比9.9%ポイント増の48.7%に達した。「旧東独政権党(SED) の後継政党」の民主社会主義党(PDS) も、その一貫した戦争反対の姿勢が効果をあげ、東だけでなく、西でも緑の支持層を食い、全体で5.8%を獲得。EU議会に初進出をした。低投票率はさらに深刻で、前回比14.8ポイント減の45.2%だった。「ガラガラの投票所、満席のストリート・カフェ。フランクフルトでは市民の半数以上が選挙に行かなかった」(FR vom 14.6) 。CDUの勝利は、「赤・緑」支持者が棄権にまわったことが影響している。PDSは「抵抗選挙人」を吸収した。最近この党は、東部ドイツの極右支持者への働きかけを強めている。極右支持は、政治不信の屈折したあらわれとみるわけだ。ここに、左右の攻撃にさらされたヴァイマル民主制を連想する人もいる。私は、投票率の低下が問題だと思う。市民の「政党嫌い」や「政治嫌い」が言われて久しいが、最近では「民主主義嫌い」(Demokratieverdrossenheit)も言われている。13日に同時に行なわれた、若干の州の地方選挙でも同様の傾向が出た以上、EU選挙の特殊性に解消できない。これはまた、石原都知事を誕生させた日本にも共通する問題である。