ヒロシマの声
'01/11/10
あす十一日は欧米で第一次世界大戦の休戦日として知られる。一九一八年十一月のこの日、ドイツと連合国が調印して大戦は終結。人々は平和へ再出発を誓った。しかし、その後の歴史はドイツのインフレ、世界的な経済恐慌、全体主義の暴威と逆回転した
世界は日本も主体になった第二次大戦に突入。ヒロシマ、ナガサキへの原爆投下という空前の惨禍で終止符が打たれた
米中枢同時テロと「テロ根絶戦争」が始まった現在は、非暴力へ向かいかけた世界に再び暴力が力を得た点で当時と状況が似ているのではないか。新たな暴力の連鎖は非暴力を懸命に訴えてきた被爆者たちの
足場を崩しかねない
ヒロシマの危機感を背に先日、平和憲法の役割を考えていく「憲法調査会・ひろしま見張番」が発足した。当面、国会の憲法調査会が各地で開いている地方公聴会へ向けて、非暴力を定めた憲法九条の意義について論議を深める
幅広い市民組織「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」は十二月上旬、アフガニスタン爆撃を知る集いを開く。来春には爆撃反対の意見が多い女性への呼び掛けを強めて大規模な集会を予定している。会は十月開設したホームページに英文欄を加えてヒロシマの動きを世界へ伝えていきたいという
原爆という暴力の極限を引き受けた被爆地の声は重みを増している。九条のよりどころをヒロシマ、ナガサキに求める水島朝穂早大教授(憲法)は「忍耐強く一人ひとりが言葉を紡いで発信してほしい」と願う。