軍事介入主義の公然たる表明 1997/9/29


ガイドラインが登場した。発表の 2日前の22日、記者発表用(和文・英文)をある新聞社がFAXしてくれた。真先に気づいたのは、中間報告で「周辺事態」協力事項のトップ項目にあった「人道的活動」という言葉が削除されたことだ。新ガイドラインは、米軍との軍事協力に一層純化されている。特に、日米共同調整所(bilateral coordination center) という新語が注目される。中間報告では「調整メカニズム」という形でぼかしてあり、旧ガイドラインではbilateral がなかった。この機関は、米韓合同軍事司令部のようなものが想定されている。米軍は「一戦域一指揮官」の鉄則を守るから、米軍司令官が最終的決定権をもつ。これは、集団的自衛権の行使を前提としたシステムである。『ワシントンポスト』 9月24日は、「日本は戦後初めて、合衆国が関係する軍事紛争において、国境外の軍事活動にたずさわることになる」と書いた(http://www.washingtonpost.com/) 。また、シンガポール『ストレートタイムズ』は9 月21日付に、キャンベル国防次官補の次の言葉を載せた。「日本掃海部隊は、・・・海上兵站線(sea lines of communication)を啓開するために国際水域において作戦できるようになろう」(http://straitstimes.asia1.com/) 。海上兵站線とは俗にいうシーレーン。ここには、公海上の機雷掃海の狙いが正直に語られている。自衛隊の「自信」のほどもすごい。旧ガイドラインでは自衛隊が「主体的に」(primarily) 行う活動は対潜作戦等だけだったが、今回は自衛隊が主役のものばかりである(「主体的に実施」primary responsibility)。特に対ゲリラ戦に言及したことは重大だ。マスコミは、北朝鮮軍の攻撃しか想定していないが、米海兵隊がやってきたような役割を自衛隊が分担することもここには含意されている。「国外での対ゲリラ戦」である。まさに軍事介入主義の表明である。さらに看過できないのは、新ガイドライン発表の際の声明の7 番目に、「日米関係の重要な要素の一つである接受国支援(host nation support as an important element in the bilateral relationship) について協議した」とあることである。安保の双務化にとって、ホスト・ネーション・サポートの方向は一層進むだろう。これは、自治体も民間も国民も含め、日本の社会全体が米軍への協力を求められる仕組みである。こんな方向を誰が望んだか。これだけの大転換が、日米の実務者だけの合意によって決められていく。国会は、「もうアメリカが合意したから」と言われて、ただ黙って関係法律を可決していくだけ。「限りなく透明に近い存在」とはいえ、国会は国権の最高機関である。今からでも遅くはない。新ガイドラインの中身を徹底検証し、このような違憲の合意の具体化をやめるべきである。なお、『世界』別冊参照。