インターネットの「敵」 1999/9/27 ※本稿はドイツからの直言です。


Die Welt紙は月に2 度、ウェッブ世界(Web Welt)という特集ページを出す。これが結構おもしろい。とくに8 月31日付は、「何も見ない、何も聞かない、何もサーフしない−−権威主義国家はインターネットをどう扱うか」というタイトルで、「インターネットの敵」として、19の国々を挙げた。ジャーナリスト団体のレポート(RSF) を紹介したものだ。同紙によると、ネットへのアクセスそのものが禁止されたり、国家に独占されているのは、ビルマ(ミャンマー)、イラク、トルクメニスタン、リビア、北朝鮮、シリアである。ベラルーシやキューバ、タジキスタン、スーダン、ベトナムでは、国家がプロバイダーである。民間のプロバイダーは存在するが、人事の統制(ウズベキスタン、アゼルバイジャン、チュニジア)や、国家が高額の料金を課して(キューバ、カザフスタン、キルギスタン)、実質的な国家統制下に置く国々も多い。フィルタリングによって検閲したり(イラン、サウジアラビア)、アクセスのたびに(!)内務省の許可を求めたり(ベトナム)、常時監視の上、部分的にブロックするなど(中国)、インターネットに対する誤解や曲解に基づく国家統制は凄まじいばかりである。分かりやすい例では、サウジアラビアが、「イスラム的価値に反する情報」という基準を立ててネット規制を行っている。インターネットが「コテコテの欧米文化」ということだろうが、中国や社会主義系諸国も似たりよったりの理由で規制している。ところで、日本の友人からの情報によると、新潟県が、県内全域でフィルタリングを発動するそうだ。公権力が行うレーティング(格付け)は検閲にあたるという専門家の指摘も何のその、レーティングの複数選択も無視して実施される。第三者機関が関与する余地はなく、「登録委員」の独断と偏見で、フィルタリングが可能な仕組みだという。驚くばかりである。公権力が無知の場合と、公権力が民衆の無知に付け込んで、それを利用してくる場合とがある。いずれの場合も、「知らぬが仏」ではなく、「知らぬは死」。インターネットの本質面に重大な損害を与えるおそれがある。なお、長野県を除く46都道府県には、青少年保護条例がある。青少年の「健全な」育成といった、大向こうに受けそうなネタだと、批判論をやかましく展開している人々もコロッと乗ってしまうので要注意である。2 年前に福岡の青少年条例が改正され、ネット上のデジタル画像をいとも簡単に「有害図書類」と見なすとされた時も、県議会ではほとんど議論がなく、「全会一致」だったことが想起される。この問題については、レギュラーをしているNHK ラジオ「新聞を読んで」97年8 月24日放送分でコメントしておいた。なお、「通信傍受(盗聴)法」が成立して、電子メールなどが覗かれるおそれも出てきた。ドイツには、組織犯罪対処の名目で、特定の用語を使った会話が自動的に「盗聴」できるシステムがあり、問題になっている。たとえば、マフィアについて取材した原稿を、記者が電子メールやファックスで日本に送った場合、その内容が国家に知られるおそれもあるのだ。どの時代でも、新しい通信手段が生まれれば、すぐにこれを悪用する者が出てくるののは避けられない。だからといって、「あんたのためよ」というお節介論理で安易な規制を認めてしまうのは大変危険だ。インターネットの本質を損なうような規制の数々が、「善良なる市民の支持」のもとに行われていく。インターネットにとっての一番の「敵」は、「知らないこと」かもしれない。

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