「宣誓」のやり直しが必要だ 2003年7月21日

しぶりにテレビに出た。朝日ニュースターというマイナーなチャンネルの、「ニュースの深層」(8:15〜8:55)という番組だ。このところテレビのコメントを断っているのは、話した内容が編集でブツ切りにされるだけでなく、こちらの意図に反する使われ方をされることが少なくないからだ。某民放のワイドショーの如きは、1回のコメントを無断で2日間に分けて使い回し、しかも、「○○であるとしても」と留保した部分のみが流され、意味がひっくりかえってしまった。それに比べてラジオは、じっくり話ができるので、こちらは断ったことがない。でも、今回は、ゲストが私だけで40分番組ということで、久しぶりに生放送に出ることにした。司会は葉千栄さん。『リアル・チャイナ!』(ダイヤモンド社)などの著書をもつ東海大学助教授である。上海で舞台やテレビの俳優をやっていただけあって、挑発的な物言いと絶妙な突っ込みで、私も大いに楽しませてもらった。ただ、彼が、「米国によるイラク戦争に反対した若者のなかに、その米国に『押しつけられた』憲法を改正しようという傾向が生まれている。これをどうみるか」という問題提起を最初に行ったため、話はおのずから、愛国心や「押しつけ憲法論」などの問題に発展した。番組の終わり際、コメンテーターの遠藤正武氏(朝日新聞編集委員)が、「憲法記念日みたいな話になった」と感想を述べたように、私自身、この番組のために準備したイラク特措法関連の話題は、ほとんど使えなかった。でも、「あと3分」というADの合図を受けて、私は最後にこう述べた。「イラクを占領している米英軍に対して、旧政権や民衆がレジスタンスを行うことは正当である。占領軍に協力する者はレジスタンスの目標になる。自衛隊は『わが国を防衛する』ためということで設置されているから、『わが国』とは無関係なイラクで、しかも米国のために危険な任務につく必要はない。『わが国』が攻められたときは所属部隊に出頭しないと7年以下の懲役になるが、イラク派遣を拒否しても罰則はない」と。番組終了後、さまざまな反響があったようだ。
  ところで、イラク特措法の問題点についてはすでに指摘した。ここで確認すべきことは、イラク市民に対する医療・給水などの援助ならともかく、戦費を含む占領軍に対する支援は一切してはならないということである。よほどのことが起こらない限り、イラク特措法は参議院で可決・成立する見込みである。だから、この機会にもう一度言っておきたい。自衛隊員は入隊のときに行った「宣誓」のやり直しを求めるべきである。このことは一度書いた。その時の「直言」は、西部方面隊でベテラン自衛官3人が続けざまに自殺したことに関連したものだった。これをUPしたのがちょうど1年前だった。この7月16日、衆議院厚生労働委員会で、93年から10年間で自衛隊員の自殺者が601人に達していることが取り上げられた。イラク特措法が成立すれば、海外で日本が武力行使を行い、あるいは戦死者を出すおそれがある。そんなとき、いま、改めて「宣誓」のやり直しという論点がリアルさを増しているように思う。少し長いが、1年前の「直言」の当該箇所を引用しよう。

……1954年に保安隊から自衛隊への切り替えの時期、全国の部隊で一斉に宣誓を行ったところ、保安隊員のうちの7300人が宣誓書に署名しなかった。つまり自衛隊への移行を拒否した。群馬県新町の部隊では、800人の三士のうち150人が宣誓を拒否した。家庭の事情や待遇不満から任期満了で辞めるつもりで宣誓拒否をした人もいたが、任期とは無関係に、軍隊化を嫌って宣誓を拒否した隊員もかなり含まれていたという。「今までの主任務だった国内秩序維持から、外敵防衛が主任務となった」ことへの反発である。自衛官が行う宣誓書には、「私はわが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、…事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の付託にこたえることを誓います」とある(拙著『武力なき平和』173頁以下参照)。「わが国」のためではなく、米軍が行う先制攻撃に参加して命を落とすことは、この宣誓書からは要求できないだろう。……

  上記に付加することはない。それにしても、首相や防衛庁長官の口から飛び出す軽口からは、国の運命や人の生死に関わる事柄についての苦渋の色がうかがえない。特に防衛庁長官は「軍事オタク」らしく、派遣部隊が持っていく装備を、プラモデルでも作りながら、「これも、あれも」と指示しているのだろうか。
  ところで、PKO等協力法24条の武器使用は「小型武器」となっていたが、周辺事態法11条とテロ特措法12条では単に「武器」となった。だが、イラク特措法17条の武器使用の規定は、「第4条第2項第2号二の規定により基本計画で定める装備である武器」を使用するとある。この長い修飾語を付けた狙いは、閣議決定により「基本計画で定める装備」の範囲はいかようにも拡大できるところにある。官邸・防衛庁サイドでは、「機関銃では自爆トラックは止められない」として、対戦車火器の携行が確実視されている。60式106ミリ無反動砲、あるいは110ミリロケット対戦車榴弾(パンツァーファウスト3)。おさえとして、84ミリ無反動砲(カールグスタフ)あたりが想定されているようである。カンボジアPKOの時に82式指揮通信車を、標準装備たる12.7ミリ重機関銃を外し、副装の7.62ミリ機関銃を一丁だけ積載して派遣したことは記憶に新しい。今回、これだけでは不十分とばかり、87式偵察警戒車(25ミリ機関砲と7.62ミリ機関銃を装備)、さらには、96式装輪装甲車まで持っていくという議論になるだろう。そこに介在するのは、「危ないところに行く以上、必要な装備は当然だ」という居直りの論理である。
  なお、日本に対する武力攻撃が行われ、内閣総理大臣が「防衛出動」(自衛隊法76条)を下令した後、自衛官が3日を過ぎてもなお職務につかなかった場合、7年以下の懲役という罰則がある(自衛隊法122条)。治安出動時の不出頭罪は5年以下の懲役(120条)、防衛・治安の待機命令に応じないのは3年以下の懲役である(119条)。だが、イラク特措法に基づく出動に関しては不出頭も処罰されず、「敵前逃亡」にも罰則がない。コソボ紛争の時、ドイツの市民団体が、連邦軍兵士に向かって派兵拒否を訴えたが、ドイツではこれは犯罪となる。だが、日本ではそうした処罰規定は存在しない。
  7月8日のテレビ朝日系列「ニュース・ステーション」の特集は衝撃的だった。イラクで米英軍兵士の襲撃事件が多発しているなか、ブッシュの戦闘終結宣言後の死者の数は三桁に近づいている。日系のポール・ナカムラ氏は、6月下旬、バグダット郊外で医療班として負傷兵を搬送中に、ロケット弾の直撃を受けて死亡した。戦争が終わったはずなのに息子はなぜ死んだのか…。遺体と体面した母親の悲痛な叫び。同僚の米兵の証言を直接聞いて、母親は息子の死の意味を問う。母親は沖縄出身。日本語で息子の「戦死」について語る彼女と、沖縄戦が重なる。「命こそ宝」(ヌチ・ドゥ・タカラ)のウチナー(沖縄人)は、イラクで死んだ息子の死を納得できない。明日の日本の姿である。