緊急:「弾道ミサイル等に対する破壊措置」命令について  2009年3月30日

3月27日、防衛大臣は「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を発令した。5年前、ミサイル防衛(MD)立ち上げのとき、この直言で批判的にコメントしたことがある。10分以内に対応する必要があるということで、閣議決定を省略し、現場の判断をかなり広げた仕組みがつくられた。自衛隊法82条(海上警備行動)に「82条の2」として、「弾道ミサイル等に対する破壊措置」を追加する法改正は2005年6月のことだった。この規定に基づき、PAC-3(パトリオットミサイル)が秋田、岩手両県などに配備される。自衛隊法82条の2の初適用である。北朝鮮は「人工衛星」の打ち上げといっている。宇宙条約(1967年) はすべての国に宇宙空間の利用を認めている(1条) 。それは平和利用に限られる(4条) 。北朝鮮もこれに加入しているから、この条約に従う義務がある。ただ、人工衛星か軍事ミサイルかどうかは、技術的には区別しづらい。今回、米国は意外に冷静である。このタイミングでの「人工衛星」騒動は、北朝鮮による米国への外交的ラブコールではないのか。北朝鮮という国の意図を、オバマ政権は見抜いているからこそ冷静なのだろう。この騒動は、ミサイル防衛(MD)が「壮大なる無駄」であることが分かってしまうことを避けるための恰好の機会ともなり得る。その意味で北朝鮮は、日本国民の税金を使ってミサイル防衛(MD)を完成させ、米軍需産業を富ませることで、米国を助ける。北朝鮮らしい、歪んだ外交パフォーマンスなのかもしれない。だが、麻生首相は「人工衛星でも迎撃する」(麻生首相、3月3日付各紙)と、妙にいきがった態度をとっている。北朝鮮というやっかいな国に対して、「人工衛星でも迎撃する」という安易な発言をすることが、外交カードを何枚も失う結果になることに気づかない。しかも、破壊措置命令は首相主導とされ、麻生派議員は北朝鮮の動きを支持率上昇の「神風」になると語ったという(『朝日新聞』3月28日付「時時刻刻」)。「変なものが〔日本の〕間近に落ちるなんてことがあった方が、日本人は危機感、緊張感を持つ」(石原慎太郎東京都知事、各紙3月28日付)という発言と合わせて、不純な動機が見え隠れする。定額給付金支給や高速道路料金1000円と、北朝鮮「人工衛星」への過剰対応とが同時進行するなか、麻生内閣支持率も上がりはじめた。手の込んだ内外のマッチポンプゲームに一番うぶなのは、日本国民だけなのかもしれない。一般に、軍や予算、検察までもが政治家の玩具になったら、そういう国は滅びに向かう。いずれにせよ国民は、細切れの報道で右往左往することなく、冷静に対応することが求められている。なお、この問題については、今後必要に応じてコメントしていくが、とりあえず以前書いた直言を冒頭に紹介し、これらの動きに対する私の視点を明確にしておきたいと思う。

(2009年3 月28日稿)

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