年のはじめに武器の話(その1)――空母、爆撃機、ミサイル
2018年1月8日

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1月4日、安倍晋三首相は「年頭記者会見」を行ったが、そのなかで、「相場の格言に「申(さる)酉騒ぐ、戌笑う」という言葉がありますが、騒がしい酉年の次にやってくる戌年は、これまでも人々が笑顔に包まれる年、次なる新しい時代への希望が生まれる年となってきました。来年に向かって私たちがどのような国づくりを進めていくのか。この国の形、理想の姿を示すものは憲法であります。戌年の今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく。自由民主党総裁として、私はそのような1年にしたいと考えております。」(首相官邸ホームページ)と語った。「戌年」にかこつけて唐突に憲法改正に踏み込む。首相としての会見で、「自民党総裁として」憲法改正を押し出す。立場を使い分けしながら、ことさらに憲法改正に収斂させようとする。1月5日の自民党本部での「新年仕事始め」では、「占領時代につくられた憲法をはじめ、さまざまな仕組みを安定した政治基盤の中で変えていくことだ」と述べた。これを報じた『産経新聞』1月6日付5面の縦見出しは、「「占領時代の憲法」改正議論意欲」である。「占領憲法」を云々する『産経』とコラボする安倍首相の改憲主張は、およそ憲法改正の合理的な理由たり得ない(水島朝穂「安倍「九条加憲」に対案は必要ない――憲法改正の「作法」」『世界』2018年1月号64-65頁参照)。

昨年夏に中欧を車で旅した際、オーストリアの「きよしこの夜」礼拝堂(オーベルンドルフ)と、ザルツブルク市内の「クリスマス博物館」を訪れた。いずれも妻の希望で、私はただ後ろから付いていくだけだったのだが、予想に反して、私の関心をひく興味深い展示がいずれにもあった。前者では「スターリングラードのきよしこの夜」コーナー。これはこのホームページの原点でもある「塹壕のマドンナ」につながる。そして、後者では、冒頭の写真にある、第一次世界大戦のときのクリスマスツリーに目が向いた。ツリーに飾られていたものは軍艦や小銃、砲弾、拳銃など「戦争のおもちゃ」だった。「もっと軍備を」という願いをツリーに託したのだろうか。右側の写真は、1940年9月の日独伊三国同盟締結の記念に作られたナイフである。その下は、1980年合衆国大統領選挙の際に、レーガン大統領候補とブッシュ副大統領候補の陣営が支持者に配ったナイフである。より安全で強い米国を押し出して圧勝した。40年の時を超えて、「もっと武器を」というメッセージでは共通している。

ところで、「直言」では何年かおきに、「年のはじめに武器の話」というタイトルのものをアップしてきた。兵器・装備品の変化が、その年の安全保障問題にどんなインパクトを与えていくかという問題関心からである。最初は2004年の正月。2回連続で、当時の石破茂防衛庁長官も登場する。次は2008年の正月で、16DDH(平成16年ヘリコプター搭載護衛艦)「ひゅうが」(DDH181)はまるで空母であるとして、IHI(石川島播磨重工業)が関係者に配布した記念絵はがきや記念シールを紹介した。

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その前年の直言「二つの“22”とニッポン」では、F22ラプター戦闘機とMV22オスプレイのことを書いた。F22は米軍にとって、ステルス技術など高度の軍事機密のため、輸出禁止(日本国内での生産禁止)となり、次期主力戦闘機(FX)はF35ライトニングに決まった。なお、これは「ポンコツ戦闘機」と呼ばれ、かなりの高額にもかかわらず問題点だらけという指摘もある。

この「直言」では、また、迷彩色を施した陸上自衛隊「オスプレイ」のプラモデルも掲載した。この写真がそうである。いまでこそ、自衛隊がオスプレイを導入することは知られているが、私は11年前にレアなプラモデルを入手して、将来の導入の可能性について指摘していた。なお、「オスプレイ」の運用思想や、日米安保体制におけるその意味については、その5年後に書いた。

そして、2014年の正月、「10年ぶりに「年のはじめに武器の話」(その1)」をアップして、自衛隊がオスプレイ17機を保有する段階に至ったことを伝えた。そのなかで、私はこう指摘していた。「「どう見ても空母だけど」と誰しもが思う護衛艦「いずも」(22DDH)・・・。6年前の「直言」で触れた護衛艦「ひゅうが」(16DDH)よりも一まわり以上大きい。これにオスプレイを搭載して運用することも可能だろう・・・。なお、将来、上甲板を改修すれば垂直離着陸機(VSTOL)のF35B戦闘機の搭載も視野に入ってくるだろう。その活動区域は「日本周辺」に限られない」と。

安倍政権は、何事も、「スピード感」をもった施策が特徴である。党内手続も国会での審議も軽やかにはぶいて、首相官邸主導(手動)で、多額の予算を必要とする米国製兵器の導入が決まっていく。「武器輸出3原則」を撤廃して、「防衛装備移転3原則」に骨抜きにしたのも安倍政権である。安全保障政策が、「アベノミクス」の「成長戦略」としても語られるようになった(直言「「成長戦略」としての武器輸出?」)。

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ところで、トランプ政権の閣僚は「3G」、すなわち、大富豪(Gazillionaire)、ゴールドマン・サックス(強欲投資銀行Goldman Sachsの役員)、将軍(General)のいずれかである。国家の公共性や中立性の建前すら解除して、むき出しの利益追求(金もうけ)を軸に、武力行使の敷居をことさらに下げる政策が打ち出されていく。トランプは銃器規制に絶対反対の「全米ライフル協会」(黒いバッジにトランプ支持が明記されている)を基盤としており、武器が安定的に売れる状態こそ理想の世界と考えている。武器売り込みにご執心のトランプと、安倍首相は、世界からあきれられるほどにねんごろである。

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2017年11月5日、米軍横田基地に降り立ったトランプは、「ゴルフ外交」(安倍がバンカーに転げ落ちる)を行い、6日の共同記者会見において、あっけらかんとこう表明した。「非常に重要なのは、日本が膨大な兵器を追加で買うことだ。我々は世界最高の兵器をつくっている。完全なステルス機能を持つF35A戦闘機も、多様なミサイルもある。米国に雇用、日本に安全をもたらす」と。これに対して安倍首相は、「イージス艦の量・質を拡充していくため、米国からさらに購入していく。ミサイル防衛システムは日米で協力して対処するもの。迎撃の必要があるものについては迎撃していく」と応じた。調子に乗ったトランプは思わず、米国ファーストを強調するために、「あなた方〔日本〕は常に二番であり続ける」と言ってしまった。安倍首相は苦笑いするだけだった。これで独立国の首相と言えるか。

この会談から6週間後の12月19日の閣議で、地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基を米国から購入することが決定された。トランプとの「約束」からわずか6週間後だった。「防衛計画の大綱」や「中期防」(2014年〜18年)にもまだ含まれていない装備が次々に買われていく。目的(計画)とその手段(武器購入)が逆転していた。

異様なのはその金額である。1基1000億円だから2基で2000億。昨年2月段階で浮上したときは700億、11月29日の参院予算委員会では「一般的な見積もりとして1基800億円」という政府答弁があったから、3週間もしないうちに1000億円に跳ね上がったわけである。数百億単位のお金が、トランプ親分のご機嫌をとるために、まるで安倍首相のポケットマネーのように扱われている。その一方で、国民生活にとって切実な予算はおおらかに削る。例えば、生活保護費の「見直し」の結果、2018年から扶助費は160億円削られ、一人親世帯に支給する「母子加算」などを含めた生活扶助額は、受給世帯の67%で減額となるという(『朝日新聞』2017年12月23日付)。

武器購入の手法も巧妙である。「有償軍事援助」(FMS: Foreign Military Sales)というシステム。これは、米軍需産業になりかわって米国政府が自ら外国に武器売り込みをするという仕組みである。このシステムの問題点は、購入する最新鋭の武器や装備品の価格も納期も米国政府の言いなりで、しかもすべて前払い。「日本が米国から最新鋭の武器や装備品を買うときは、米政府の有償軍事援助(FMS)に基づく。価格や納期は米国の提示する条件を受け入れなければならず、米国の「言い値」ということである」(『中国新聞』12月23日(共同通信配信記事))。FMSによる購入額は2008〜12年度の計3647億円から、安倍政権が予算編成した2013年〜17年度では約1兆6244億円へと急増している。

トランプのいう「バイ・アメリカン」(米国製品を買え)路線に無批判に追随しているとしか思えない。政府内では、「米国製品の購入は、もはや政治案件だ」との声もあるという(『朝日新聞』12月24日付)。F35はロッキード・マーチン社、無人偵察機グローバルホークはノースロップ・グラマン社、オスプレイはベル社とボーイング社というように、一国の安全保障政策がトランプの「公約」(雇用を増やす)の道具にされている。安倍政権側の安全保障専門家たちは、北朝鮮のミサイル恫喝に短絡的・短期的に対応して、弾道ミサイル防衛に過度に偏った予算投入を行うことに問題を感じないのか。費用対効果の検討も抜きに、米国だけから「言い値」で新装備を買いまくる愚について疑問を感じないのだろうか。

そうしたなか、12月になって唐突に飛び込んできたのが、F35を搭載できる航空母艦の建造である。防衛省が、短距離離陸のF35B戦闘機の導入を本格的に検討していることを、共同通信がスクープした。この「直言」の最初の方のリンクをお読みいただいた方は、対潜ヘリを3機搭載するヘリコプター搭載護衛艦(DDH)が、いつの間にか、巨大な飛行甲板をもつ空母のような艦に変貌した「前例」をご記憶のことと思う。最近になって、導入を決定した空軍仕様のF35A42機の一部をF35Bに変更するか、別個、追加購入するかの案が出てきて、「防衛計画の大綱」の改定でこれを盛り込むことも想定したという(『東京新聞』12月25日付より)。

F35は、レーダーに捕捉されにくい高度なステルス性を備えている。ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」や「かが」などの艦首を、戦闘機が発艦しやすいスキージャンプ台のように改修し、甲板を耐熱塗装するという計画も明らかになった(『読売新聞』12月26日付)。改修では、離発着の際にエンジンが発する高熱に耐えられるように甲板の耐熱性をあげているという。F35B戦闘機を搭載した護衛艦とは、まさに空母そのものである。「自衛隊初の空母保有となり、2020年代初頭の運用開始を目指す」と伝えている(『読売新聞』12月26日)。

個々の武器のうちでも、保持が許されない武器、つまり「性質上もっぱら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられるいわゆる攻撃的兵器」として「直ちに自衛のための必要最小限度を超える」ものとして例示されるのは、大陸間弾道弾(ICBM)、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母である(1988年4月6日 参院予算委員会・瓦防衛庁長官答弁)。

ちなみに、「攻撃型空母」とは、きわめて大きな破壊力を有する爆弾を積めるなど大きな攻撃力をもつ多数の対地攻撃機を主力として、それに掩護戦闘機や警戒管制機などを搭載して、これらの全航空機を含め、それらが全体となって一つのシステムとして機能するような大型の艦艇(例えば、米国のミッドウェー級の空母とされている。攻撃型空母でない空母としては、対潜水艦哨戒を主たる目的とし、対潜水艦哨戒機としてのヘリコプターを搭載して海上を哨戒する潜水艦哨戒型空母(例えばイタリアの空母ジュゼッペ・ガリバルディやフランスの空母ジャンヌ・ダルクなど)があげられている(1988年10月20日、参院内閣委員会 小野寺防衛庁参事官、日吉防衛局長答弁など)。しかし、もともと空母自体に防衛用と攻撃用の区別はなく、空母自体が「戦力」にあたるというべきである(水島朝穂「憲法9条」『基本法コンメンタール 憲法(第5版)』(日本評論社、2006年)51頁参照)。

多額の武器購入が、防衛省ですら十分に理解していない段階で、いったいどこで、どういう形で決められているのだろうか。次回は、自民党国防部会での議論を見ることで、「党で全く議論していない。このままなら党はいらない」(小泉進次郎衆議院議員)というほどに異様な官邸主導(主動、手動)、政権私物化の状況を診ておきたいと思う。 (この項続く)

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