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今週の「直言」 (2010年8月30日) こちらからも読めます(高文研)。
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雑談(80)青年はエスカレーターをめざす? 先 週、ゼミの沖縄合宿をやった。 水島ゼミとして7回目である 。実は昨日から函館にいる。憲法理論研究会の合宿である。そこで今回は書き下ろしが不可能なので、ストック原稿をアップする。 「ペット介護」 に続く「雑談シリーズ」の80回目で、エスカレーターという乗り物について、私の個人的感想を述べたものである。 これを必要とする障がい者や高齢者の事情は当然踏まえており 、あくまでも若者・青年・学生に向けたものであることをお断りしておきたい。
映画「三丁目の夕陽」で再認識された東京タワー。東京に住んでいても、あの展望台に昇ったことのある人はそう多くはない。 東京スカイツリーというコテコテのデジタル塔が完成すると 、あのアナログ時代の象徴は忘れられていくのだろうか。 1992年1月3日、私は息子と甥を連れて、その東京タワーに行ったのだが、正月休みでエレベーターは大変混雑していた。そこで、私たちは外側の階段を昇っていった。東京がどんどん目の下になっていく。全部で637段。展望台に着いたとき、当時の手帳に階段数を書き込んでおいた。その10年後、それを甥の結婚式のスピーチで使った。「…東京タワーには、エレベーターを使わず、自分の足を使い、時間をかけて階段で昇る方法もあります。小学生のとき、一緒に昇ったあの637段を覚えていますか…」。 私は若い頃から、エスカレーターはできるだけ使わない主義できた。 健康法というわけでもないが 、万歩計をポケットに入れて毎日1万歩を目標に歩いている。駅のホームは、もっぱら階段である。 例えば、JR新千歳空港駅から出発ロビーまで、長いエスカレーターを使わず、横の階段を昇っていく。そんな変なおじさんを、エスカレーターに乗った若者たちが不思議そうに眺めている。そんなことをするのは、自分の健康のためだけではない。実はエスカレーターという乗り物への違和感がそうさせているのである。 駅や建物の構造上、エスカレーターしかない場合は、足を使って右側を昇り、あるいは降りていく(大阪では左側に切り換えるが)。私のように「歩く」ことが、 エスカレーターの乗り方として邪道であることは十分承知している 。障がい者や高齢者のために、「バリアフリー」の観点から、こういう設備も必要だろう。それは重々分かっている。ただ、私が言いたいのは、若者への影響である。地下鉄の長いエスカレーターですれ違うとき、反対側からゆっくり上がってくる(あるいは下がってくる)若者たちの多くは携帯を覗き込んでいる。10人くらいが、前かがみの同じ姿勢で、ベルトコンベアのように流されていく場面を目撃したときは、何とも言えない気分になった。 ところで、エスカレーターと階段の両方があるところでは、人の流れに不具合が生ずることがある。東京メトロ高田馬場駅の中野方面ホームで、私は、毎回のように人とぶつかる。降りた乗客(時間帯によっては大半が早大生)の多くは左側のエスカレーターをめざすので、電車から斜めに人の流れができる。私のように階段に向けて直進する人はこれと確実にぶつかるわけである。ふと横を見ると、学生たちの多くがエスカレーターの前で列をつくっている。この階段はたった25段である。「青年は荒野をめざす」というのは昔の話。いま、「青年はエスカレーターをめざす」のだろうか。 JR高田馬場駅 。数年前、ホームの中間あたりに上下のエスカレーターができた。バリアフリーの目的で設置されたようだが、ホーム全体の一日の「運用」という点で、これがうまくいっているかどうかには疑問がある。もちろん、バリアフリーの目的のために、ホーム上にさまざまな支障が生まれることは、目的達成のために受忍すべきものという考え方はありうる。ただ、その設置場所については、乗降客の動線を十分考慮したものなのかどうか、かえって利用者が危険になる場合はないのかなど、見直す余地もあるように感じる。 とりわけラッシュ時、内回りと外回りがホームに同時に着いたとき、この1本のエスカレーターの前で混乱が起きる。私個人はエスカレーターに向かう列には並ばず、必ず前方まで歩き、従来からある階段を使って降りる。その付近はすでに空いているが、振り返ると、後方のエスカレーター付近の列はまだ続いている。 6月29日午前9時20分頃。山手線にトラブルがあって電車が止まった。内回り2番線ホームには、ドアごとに乗客の長い列が出来てホーム全体をふさいでいた。そこへ外回りが1番線に到着。私を含め、その電車の乗客は、ホームに降りたところで、ホームいっぱいに広がる乗客の列に阻まれた。外回りのドアの前に、内回りを待つ乗客の背中が迫るという構図である。当然、1本しかないエスカレーター前は大混雑。その時、駅のアナウンスがこう告げたのだ。「現在、下りエスカレーターは運転を止めております」。 前方の階段をめざして進みながら一瞥をくらえると、そこは「横2列の階段」と化していた。もし下りを動かせば、こんな状態でも、左側に立つ人は携帯を見ながら立ったまま下りていくのだろう。右側1列だけではホーム上の乗客をさばけない。そこで、駅員が判断して、下りを止めたのだろう。結果的に人の流れは早まり、2人並んで階段のように下りていった。ホーム上の混雑はやや緩和されたようである(この状況描写は、当日、駅構内にいる間に手帳に書き込んでおいたメモによる)。 この措置一つとってみても、エスカレーターの存在が、むしろ混雑を生み出していることがわかるだろう。バリアフリーのためとはいえ、それが障がいをもった人々にとっても必ずしもプラスではない、という現実がここにある。高田馬場駅のホームにはエレベーターもある。階段とエレベーターを基本として、それにエスカレーターを加えるときは、ホーム上の動線の分析を踏まえた慎重な検討が必要だろう。 現在、 私の研究室のある法学部8号館は12階建て 。朝、大学に着いたとき、11階の研究室まで階段で上がるようにしている。南門に近い入口から入ると地下1階なので、実質12階分ある。上がりきると、汗が背中ににじむ。授業や会議のための移動はエレベーターを使う。これがなかなかこない。学生が下層階の移動に使うため、高層階の研究室の移動に支障をきたしているのだ。1階から乗ってきて、3階で降りる学生もいる。エレベーターの横に、「学生は4階まではエスカレーターを使いましょう」と書いてあるが、私は「階段を使いましょう」に変えるべきだと考えている。実際、4階まで上りエスカレーターはあるが、下りはない。階段で行けという設計である。 幼稚園から大学まで、入試なしの「エスカレーター」で進学する人が増えている。近年の若者は、人生だけでなく、日常生活でもエスカレーターを好むようである。4階までなのにエレベーターを待つ学生。あるいは1階から2階の教室までいくエスカレーターの左側に立っている学生。その横の階段を、教授がのぼっていく。若者よ、もっと足を使え! 〔付記1〕誤解のないように繰り返しておくが、本稿は、若者が安易にエスカレーターに向うことを問題にしているのであって、バリアフリー一般を問題にしているわけではない。私のゼミでは「現場主義」を大切な柱にしている。ネットで安直に調べた情報でなく、そこにも「もっと足を使え!」なのである。なお、足を使わなくなった若者は、手も使わなくなった。手書きができず、キーボードも打たず、携帯から親指でレポートを送ってくる時代になった。何とかパッドが普及したら、今度は人指し指か。思考の劣化が進んでいく。もっと手を使え!の話は、次の雑談(81)に続く(時期は未定)。 〔付記2〕私の1年ゼミの女子学生が、渋谷、新宿、東京など数駅のエレベーターの写真を撮影して送ってくれた(8月23日)。冒頭はJR渋谷駅、もう一枚はJR東京駅の写真である。また、 法科大学院で教えた院生の一人からレポートが届いた 。それは、東京メトロ半蔵門線・東急田園市線の渋谷駅ハチ公改札をめぐる利用客の流れを分析したものである。本文中で指摘したホーム上、あるいは改札に向う動線の問題を検討する上で参考になると思うので、ここで紹介しておきたい。猛暑のなかの写真撮影や、原稿の作成を通じて本直言に協力してくれた皆さんに感謝します。 |
「新聞を読んで」 〜NHKラジオ第一放送
(2010年7月23日午後7時収録、7月24日午前5時18分放送)
NHKオンラインへ(声が聞けます)
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1.「おわび」と「お礼」の「温度差」
2.改正臓器移植法の施行をめぐって
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Dieses Spielzeug wurde aus der Aschiana-Schule, Kabul geschickt. ――「アシアナから」―― 2002年のカブールの職業訓練施設で一少年が作った木製玩具。 肉挽器の上から兵器を入れると鉛筆やシャベルなどに変わる。 「武具を文具へ」。 平和的転換への思いは、いつの時代も同じです。 「直言」2002年6月10日 |
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Copyright 1997 Mizushima Asaho
『時代を読む ――新聞を読んで ●1997-2008●』 (柘植書房新社) |
『長沼事件 平賀書簡――35年目の証言 自衛隊違憲判決と 司法の危機』 福島重雄 大出良知 水島朝穂 編著 (日本評論社) |
![]() 『憲法「私」論 ―みんなで考える前に ひとりひとりが考えよう』 (小学館) |
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『国家と自由―憲法学の可能性』
樋口陽一ほか共著
(日本評論社)
![]() 『新六法2010』 共編 (三省堂) |
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