「フェイスブック宰相」は「フェイク宰相」――安倍晋三とネトサポ
2019年2月18日

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週の金曜日、2月22日は何の日か。安倍政権の2616日。安倍晋三が首相在任期間という一点においてのみ、吉田茂と並ぶ日である(この写真は1967年吉田国葬の警備記念メダル)。翌23日になると、「俺は吉田茂を抜いた」と達成感にひたるのだろうか。それにしても、このところ、安倍首相は、かなりハイテンションで、居直り、開き直り、逆ギレの荒れた国会答弁が目立つ。

この安倍首相の表情には、いくつかのパターンがある。第1に、国会や国連、国際会議での演説である。激しい身振りと手振り、昂揚した表情。国会の演説では、節目節目で、「〜しようではありませんか」という言葉で結んで、拍手をあおる。2016年9月26日の衆院本会議では、壇上で自らに拍手するという、社会主義国の党大会のような光景が現出した(写真)。

第2は、予算委員会などの一対一でのやりとりの際、相手によって、けんか腰や薄ら笑いを多用する。「急所を突かれると興奮する安倍首相の性癖」(PRESIDENT Online)という指摘が妥当する。旧民主党系の議員、特に女性議員に対しては、はなからバカにした態度をとる指をさし、野次をとばす(2015年2月19日衆院予算委員会)。相手をバカにする時の代表的表情がこれである。なお、対外的には、徴用工問題などで、隣国の韓国に対して、過度に尖った表現で非難する時の表情はきわめて冷たい。外交では抑制すべき感情的な言葉づかいを多用する。トランプエルドアンに対する表情との落差が際立つ。

第3に、困難な問題や、苦手な相手の場合、眉毛が八文字になり、メモから頭があがらない。非常に卑屈な姿勢に一転する。その代表的な情けない表情がこれである(写真)。なお、第4の、まったく無防備な表情が、閣議決定で「私人」と認定された昭恵夫人により撮影されたこの1枚である。

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『ニューズウィーク』誌2013年7月30日号は、安倍首相のことを「フェイスブック宰相」と名付けた。「いいね!」「いいね!」のアクラマチオ(喝采)に元気をもらって(直言「「フェイスブック宰相」の靖国参拝」)。安倍首相は、「いいね!」をしてくれるだけでなく、反対する者(自民党内も含めて)に悪口をネットで拡散してくれる「親衛隊」を保有している。「自民党ネットサポーターズクラブ」(J-NSC)である。2009年8月に政権の座から降りるや、これを結成して、ネット戦略を展開した。右の写真は、「自民党ネットサポーターズクラブ」のFacebookからである。安倍首相との記念撮影だが、サプライズで登場したらしく、SNSではメンバーたちの興奮気味の書き込みが見られた。それだけ「フェイスブック宰相」の安倍首相は、この種の人々を重視しているということである。2017年時点の会員数は約1万9000人。学生や若者は少なく、中高年が多い。「職業としてのネトウヨ」がけっこう含まれているようである。

宮武嶺弁護士のブログでは、この「ネトサポ」の実態や背景が詳しく紹介されており、単なるボランティアでなく、資金的裏付けをもって(官房機密費?)、ネットの常時監視、反論、削除、工作を行っていることがわかる。また、2013年6月19日発足した特別チーム「Truth Team(T2)」は、選挙のなかで候補者に対する書き込みなどを監視して、削除や「正確な情報」を発信し、修正しているという。「真実チーム」という名称がすごい(ジョージ・オーウェル『1984年』の「真実省」が想起される)。FacebookやTwitter、ブログのほか、2ちゃんねる(5ちゃんねる)などの掲示板も分析、監視の対象にしているというから徹底している。

冒頭の写真は、今年1月7日の新聞各紙に見開き1頁で掲載された宝島社の広告である。2種類あって、湾岸戦争(1991年)の際の重油にまみれた水鳥の写真は、フセイン政権の犯行とされたが、実は違っていたことで、「嘘つきは戦争の始まり。」を象徴している(『朝日新聞』1月7日付等)。ローマの「真実の口」の広告は、『読売新聞』『日刊ゲンダイ』1月7日付に掲載され、「敵は、嘘。」とある。「世界中にこれほど嘘が蔓延した時代があっただろうか」と警告を発し、「嘘に慣れるな、嘘を止めろ、今年、嘘をやっつけろ」と続く。

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この広告が出された「今年」も2カ月が過ぎようとしている。この間、安倍政権の「嘘」は多角的、重層的に繰り出されている。どれも、これも嘘。こんなことはかつてなかった。勤労統計不正調査は、影響の大きさを考えると、国の根幹を揺るがす。また、1月6日のNHK「日曜討論」で安倍首相が、辺野古沖で強行されている土砂投入に関連して、「あそこのサンゴは移しております」といったが、防衛省は希少サンゴ9群体を移植したものの、残る7万4000群体の移植はやっていない。虚偽発言だったのに、NHKは何のフォローもしなかった。『日刊ゲンダイ』は宝島社の「敵は、嘘。」の全面広告を掲載した日の一面で、このNHK「日曜討論」の嘘を取り上げ、「安倍 ウソ八百」と見出しを打った(冒頭の写真参照)。

安倍首相の改憲主張は、フェイクそのものである。すでに何度か論じているが、「無知の無知の突破力」のパワーはすさまじく、改憲についても嘘を連発し、安倍流「フェイク改憲」を狙っている。

この間、ずっと「7割の憲法学者が自衛隊を違憲というから」あるいは、「2割の憲法学者しか自衛隊を合憲といわないから」という理由で、憲法9条の改正を主張してきたことは承知の通りである。「自衛官の子どもの言葉」(「お父さん、自衛隊は違憲なの?」)を含めて、フェイク性はきわめて高い。この主張の消費期限が切れて、この1週間ほどは、自衛官募集での自治体協力の問題を前面に押し出してきた。

2月10日の自民党大会で、安倍首相は、「都道府県の6割以上が自衛官募集への協力を拒否している」から憲法改正だ、という主張を展開した(『毎日新聞』2月13日付2面)。これはフェイクである。防衛大臣は、実際は約9割の自治体から情報提供を受けていると述べた。防衛大臣が自治体首長に対して、自衛官募集の「必要な報告または資料の提出を求めることができる」(自衛隊法施行令120条)と規定する。「できる」であって、法令上、自治体側に名簿提供の義務はない。2月15日の衆院予算委員会で、岩屋毅防衛大臣は、全国1741市町村のうち、自衛官募集業務の協力要請に応じていない自治体は5つであり、これは全市町村の0.3%であると答弁した(『東京新聞』2月16日付)。地方自治の自治たるゆえんであり、かつ、全体主義国家でない証でもある。

自衛官募集は地方自治体の法定受託事務である。かつての「機関委任事務」におけるような国の包括的指揮監督権は認められていない。地方自治は憲法原理であり、地方自治体に対して、総理大臣が、居丈高に国の自衛官募集事務に100%従えというような号令を発すること自体が異様である。地方自治の何たるかを理解していない。「6割以上が協力を拒否」という首相の主張の前提がフェイクとしかいいようがない。

自衛官募集にはさまざまな問題が絡んでいる。基本には自衛隊の違憲性の問題がある。「募集環境の悪化」は18歳人口の減少(少子化)が大きく、12年前の直言「自衛隊にも「レンタル移籍」」でも触れたような問題はさらに深化している。2015年以降は、集団的自衛権行使を狙った安保関連法による海外派遣のリスクの影響もある。適齢適格者の正確な把握なしに兵力・編制計画ができない以上、自衛隊が軍としての属性をすべて具備するためには、より強力な要員確保システムの検討と、より強力な規律と制裁の仕組みが必要になってくるだろう(自民党憲法改正草案には軍事審判所(軍法会議)がある)。

6年前に書いたように、安倍首相の「思い入れや思い込み、思い過ごしや思い違いが、壮大なる勘違いの大河となって、国や社会にダメージを与えている」。安倍首相が思わずいったことが、かりに間違いでも、周囲が「忖度」して、しかも虚偽や意図的な曲解に基づく情報をネット上にばら撒いていく上記の仕組みと相まって「あったことがなかったこと」に、「なかったことがあったこと」にされていく。

在任期間が吉田茂を超えても、桂太郎にまでは時間がかかる。とうとう二階幹事長は「安倍4選」を語り始めている。これこそ「悪夢」であろう。

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