『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』


安保法制審議における
「11の論点」
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ライブ講義 徹底分析! 安保法制審議

このページは安保法制審議にあわせて『ライブ講義 徹底分析!集団的自衛権』の論点を紹介するために、岩波書店のサイト内に設けられていました。国会審議は終了しましたが、岩波書店の許可を得て水島朝穂のホームページ内に移設することになりました。国会審議で論点になったことを振り返る際には是非ご活用下さい。

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▼ 安保法制審議における「11の論点」
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1 安倍内閣による「憲法介錯」
①集団的自衛権行使のためには憲法改正という「手段をとらない限りできない」(角田内閣法制局長官)。なぜ閣議決定で解釈を変更できるのか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』57頁~61頁)
②確定した憲法解釈を「7・1閣議決定」により安倍内閣が変更したことの及ぼす影響
→「あり得ない」(1988年衆院本会議竹下首相)集団的自衛権行使を解釈変更でやってのけた安倍首相が徴兵制導入は「憲法上あり得ない」と発言。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』83頁~88頁)
→公明党と創価学会の関係が憲法の政教分離の原則に反すると主張していた自民党有志の勉強会「憲法20条を考える会」の設立メンバーだった安倍首相と、「創価学会、私は、この団体はまさに政教一致の団体そのものである」と主張した菅義偉官房長官。「公明党は政教分離の原則に反しない」とする政府解釈が変わらないという保証はなくなった。(直言2014年6月16日)
2 個別的自衛権行使と集団的自衛権行使の重なり合い
重なり合いはない『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』68頁~82頁、『沖縄タイムス』2015年5月1日付文化欄
①「新三要件」の危険性――戦前の軍部の発想(『軍艦外務令解説』)と閣議決定の接近
②「存立危機事態」に該当する状況は、同時に「武力攻撃事態等〔にも該当することが「多い」ということは、「存立危機事態」のみに該当する状況があり、その場合には隊法88条1項により、集団的自衛権を行使することができるということか。
③「存立危機事態」と「武力攻撃事態」に同時に該当し、自衛隊法76条1項により防衛出動が下令された場合であっても、「武力攻撃事態」であるから、隊法88条1項による武力行使は個別的自衛権であるということか。
3 邦人輸送中の米輸送艦の防護
①日本が集団的自衛権を行使すれば、日本が報復攻撃を受ける(1954年下田外務省条約局長)が、日本が集団的自衛権を行使した「後」に攻撃国と日本との間で生ずる武力紛争にどう対処するのか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』90頁~101頁)
②米艦船に邦人が乗れないことは、米国の資料から明らかではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』101頁~105頁、108頁~112頁)
③米国は外国人救出について外国と協定を結ばない方針であるが、米軍による邦人の救出を念頭に置くなら、なぜ、今回のガイドライン改定に伴い、米軍による邦人の救出について米国と協定を結ばなかったのか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』106頁~108頁)
④韓国政府は日本の集団的自衛権行使の地理的限界は韓国の作戦区域外(安倍首相と密接な関係のある統一教会の系列の新聞「世界日報」の地図参照。)に限定するとしているが、「朝鮮半島有事」の際、自衛隊の米艦防護はどこで行うつもりなのか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』115頁~119頁)
4 ホルムズ海峡における機雷除去
①ホルムズ海峡に機雷を敷設すると想定している国はイランか。
②機雷除去の根拠は集団的自衛権行使か。
③機雷除去について、安倍首相は「受動的」な行為と言うが、米軍は「能動的」な行為であり、「戦争行為」と言っているではないか。
④ホルムズ海峡の国際通航帯は全てオマーン領海に設定されているから、機雷敷設という攻撃を受ける「我が国と密接な関係にある国」はオマーンか。オマーンが「我が国と密接な関係にある他国」なら、「重要影響事態」である「朝鮮半島有事」の際、北朝鮮のミサイル対応などでも防衛交流を進めている韓国も「我が国と密接な関係にある他国」なので、韓国軍を守るために集団的自衛権を行使することになるのではないか。
⑤親日的なイランに対して日本は武力を行使するつもりか。
⑥従来の政府解釈からすれば、海外派兵ではないか。
⑦国際法上、民間商船に自衛隊の護衛を付けた時から当該民間商船は軍事目標となるのではないか。安倍首相は民間商船を危険にさらすのか。
5 弾道ミサイル防衛
①米イージス艦は弾道ミサイル防衛と自艦防護の同時対処能力があるではないか。2012年4月の北朝鮮の「銀河3号」発射事案という「実戦」でも、自衛隊による米艦防護は不要だったではないか。
②「存立危機事態」の際に、アメリカに向けて発射された北朝鮮の弾道ミサイルを日本は撃ち落とすのか。金正恩は迎撃すれば「本当の戦争をしようと決意」と発言しており、日本は北朝鮮からの報復を覚悟すべきではないか。
6 米軍等の部隊の武器等の防護のための武器の使用
① 米軍等の部隊の武器等の防護のための武器の使用が認められる憲法上の根拠は何か。「7.1閣議決定」による解釈変更前の政府解釈では認められないのではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』189頁~194頁)
②平成26年12月29日、大韓民国国防部、日本国防衛省及びアメリカ合衆国国防省は、北朝鮮の核及びミサイルの脅威に関する3か国防衛当局間の情報共有に関する取決めへの署名を完了した。北朝鮮のミサイルが日本の安全保障上の脅威だというのであれば、これに対処している韓国軍は、「その他の外国の軍隊」として、新たな武器等防護の対象となり得るのではないか。
7 在外邦人等の保護措置
①韓国政府は朝鮮半島への自衛隊の上陸を拒否している。「朝鮮半島有事」の際、邦人を救出できないではないか。韓国政府が自衛隊の上陸を拒否している理由について、安倍内閣は自らの歴史観に由来していることを自覚しているのか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』169頁~173頁、244頁)
②上海事変のような事態にならないと断言できるのか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』170頁~171頁)
③自衛隊の準機関紙『朝雲新聞』は、「国会質問を聞いていると、陸上自衛隊の能力を強化し、現行法を改正すれば、人質救出作戦は可能であるかのような内容だ。国民に誤解を与える無責任な質問と言っていい」と論評。安倍内閣は現場の声を無視しているではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』259頁~260頁)
8 武力の行使との一体化――「現に戦闘行為が行われている現場」
①「武力の行使との一体化」論それ自体は前提とするとしているが、従来の「非戦闘地域」という概念は、国が武力の行使と一体化することがないということを制度的に担保する仕組みだった。名古屋高裁は、航空自衛隊のイラクでの活動を武力行使と一体化しているとして違憲としたが、制度的な担保が外れてしまえば、より戦闘地域に接近し、死傷者が出る可能性が飛躍的に高まるのではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』174頁~188頁)
②イラク帰還後29人もの自衛官が自殺していた。今後、戦闘による死傷者や自殺者の増加が予想されるのではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』195頁~204頁)
9 PKO関係
①「日本はPKO派遣が主要国最下位」という安保法制懇08報告書は誤りであることを認めよ。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』152頁~156頁)
②任務遂行のための武器使用を認めれば、先に発砲したのは自衛隊になるから、自衛隊の発砲が原因となって戦闘が拡大するのではないか。安倍内閣は戦闘が拡大したときの責任をどうとるのか。各国が軍に警告射撃を禁止することがあるのは、戦闘の拡大を防止するためではないのか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』157頁~168頁)
10 いわゆる「グレーゾーン」事態と「領域警備法」
①結局、いわゆる「グレーゾーン」事態については、新法や法改正が必要な「隙間」 はなかったではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』206頁~217頁)
②領海内で潜没航行する外国の軍用潜水艦に対して武器の使用ができないのは、憲法の制約ではなく、国際法の制約だったではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』229頁~232頁)
11 「積極的平和主義」
①ISは、「安倍晋三以前、日本はISの標的リストには挙がっていなかったが、今や全ての日本人はISの標的」と主張。「安全保障環境の変化」をもたらしたのは、日の丸とダビデの星を並べて会見するような感覚の安倍首相の存在自体ではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』252頁~265頁)
②日米安保条約上、領海外にいる自衛隊を米国が防護する義務はなく、米艦を日本が防護する義務もないではないか。安倍首相は、安保条約5条で日本が攻められたときの共同対処、6条で日本が米国に基地を提供することで、双務性がある関係と答弁している。日本が基地提供の負担をしたまま、さらに米艦を防護する負担まで追うのでは、双務性がもはや失われているではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』129頁~132頁)
③安倍首相はアメリカの戦争に巻き込まれることは、「絶対にあり得ません」というが、既に在日米軍基地からアメリカはイラクなどに出撃しており、巻き込まれているではないか。(『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』132頁~138頁)


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