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2025年4月12日 岩手弁護士会講演会
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今週の「直言」

2025年4月24日


「植物の日」に

所の東郷寺のしだれ桜は3月28日に満開になり、4月14、15日は八ヶ岳南麓の仕事場周辺の桜を堪能した。新府城址近くの桃源郷も。今日、4月24日は「植物の日」である。日本の植物学の父と呼ばれる牧野富太郎博士の誕生日ということで設けられた。牧野のことは、2023年のNHK朝の連続テレビ小説(朝ドラ)『らんまん』の主人公のモデルになったことで広く知られるようになった(直言「雑談(140)牧野富太郎と水島正美―NHK連続ドラマ『らんまん』を契機に」参照)。このドラマは、早逝した私の叔父、水島正美(東京都立大学助教授、牧野標本館)のことを改めて、深く知る機会ともなった。なお、昨年の『虎に翼』によって、女性法律家・三淵嘉子も全国区になった(直言「憲法記念日に朝ドラ『虎に翼』を見る―日本国憲法施行77年に」参照)。来週は日本国憲法施行78年である。

トランプの「関税ハンマー」

   トランプの「関税ハンマー」については、直言「トランプ「関税ハンマー」と旧統一教会」で書いた。その恣意性は際立っていて、世界中が振り回されている。トランプのもとにピコッと飛び込んでいったのが、赤沢亮正・経済再生担当大臣である。トランプのサイン入りのMAGA(=米国を再び偉大に)赤帽をかぶって、このポーズである(TBS「サンデーモーニング」4月20日より)。ホワイトハウスはこの写真を全世界に発信して、「日本は馳せ参じておるぞ、遅れるな」とアピールした。「国辱」という言葉は好まないが、これを使いたくなるような恥ずかしい場面である。

   「関税ハンマー」の影響は絶大で、ドイツの証券取引関係のBörsenNewsの4月4日は、すさまじい剣幕でハンマーを振り降ろすトランプを描いて、「破綻寸前の銀」という見出しを打った。また、スイス東部の地域新聞『Tagblatt』4月8日付文化欄は、上記のイラストを付けて、「関税ハンマー」の言語的読み解きをやっていて興味深い。タイトルは「トランプの "関税ハンマー "は私たちの言葉も打ちのめす」。要旨は次のようなものである。

…ワシントンからの怒りと自己満足に満ちたレトリックのハンマーには、本当に神経を逆なでされる。この米国大統領は、聖書のザアカイのことを忘れているのではないか。ザアカイは、新約聖書ルカの福音書19章に登場する徴税人頭で、最も嫌われていた人物だった。カトリック的な言い方をすれば、関税のおかげで自分勝手で贅沢な暮らしを送ろうとする者は、他人の労働力から金をむしり取っているのであり、おそらく地獄に落ちるだろう。…ドナルド・トランプが「関税ハンマー 」の手本にしたのは何なのかという疑問が残る。 おそらくそれは、哲学者フリードリヒ・ニーチェであろう。ニーチェは「人はハンマーで哲学しなければならない」と書いた。彼のハンマー思考は、「理性」という古い偶像を破壊するだけでなく、「生命」という新しい偶像を創造しようとした。 …トランプがこのハンマーを使ってアメリカ経済を利己主義の黄金時代へと導こうとしているのは明らかだ。しかし、少しは聖書を読んでほしかった。ルカの福音書(ルカ19:8)では、イエスの訪問の後、ザアカイはこう宣言している。「自分の一生の財産の半分を貧しい人に分け与え、もし人をだました人がいれば、4倍に返して償うことを誓います」と。



チェンソーは自分に向かう?

 アルゼンチン大統領のハビエル・ミレイは、イーロン・マスクにチェンソーを贈った。官僚制や公共支出削減する象徴的ツールである。冒頭の写真はRT 2025年2月21日から。ミレイは大統領就任式に招かれた数少ない一人で、トランプのお気に入りである。当然、「政府効率化省」のマスクには最高のプレゼントだったろう。2月20日にワシントン郊外で開催された保守政治行動会議(CPAC)に登壇。「これは官僚制のためのチェンソーだ!」とマスクは叫び、ミレイの選挙スローガンである"Viva la libertad, carajo"(「自由万歳、くそったれ!)が刻まれた電動工具を振り回した。マスクは、2026年までに連邦政府の運営を合理化し、連邦政府の支出を2兆ドル削減するためにトランプが設立した組織、「政府効率化省」(DOGE)を率いている。DOGEはその名前とは裏腹に連邦行政府の常設部署ではなく、米国国際開発庁(USAID)や消費者金融保護局(CFPB)の解体など、徹底的な削減を実施してきた。 また、連邦支出を抑制する広範な戦略の一環として、国立衛生研究所(NIH)の助成金にも厳しい制限を課している。

    9年前の第1次政権の時に直言「権力は人事である―トランプ政権の正体が見えてきた」をアップしたが、この時の人事はまだトランプ一色ではなかった。トランプのやり方に抵抗する軍高官もあらわれた。第2次政権は「リベンジ」ということだろうか、あらゆる役所、あらゆる部署を徹底してトランプ信者で固めた。とはいえ、チャットでイエメン「空爆」の軍事情報を流した国防長官のピート・ヘグセスは予想通りお粗末だった(「国防総省“メルトダウン”」(The National Interest 4月21日参照)。

   直言「トランプ2.0は「恣意の支配」」でも紹介した「憲法ブログ」2月21日の論稿「トランプの反憲法(Gegenverfassung, Counter-Constitution)」に注目したい。トランプは、「自国を救う者は、いかなる法律にも違反しない」(He who saves his Country does not violate any law.)と叫び、ナポレオンに自らを引き寄せる。「憲法ブログ」に掲載された「トランプの反憲法」は、次のように指摘している。

 …トランプは、大統領令が他のすべての法源に「優先する」という立場をとる。大統領令に従うことを拒否した人々は、即座に解雇されるか、強制的に一時帰休させられた。 多くの連邦政府高官は、法律を破るよりもむしろ辞職している。トランプの大統領就任からわずか1カ月で、連邦政府は、憲法や議会、裁判所が何と言おうと、大統領令が唯一の適用法であるかのように振る舞っている。現在、この状況について、多くの専門家は「政権奪取」、「憲法危機」、あるいは「クーデター」といっている。米国はいまや間違いなく独裁政治への道を歩んでいる。…大統領令は、私が「反憲法」と呼ぶもの、つまり現行憲法に取って代わるために作られた代替憲法の現実の首尾一貫した姿を描いている。権力分立の代わりに、トランプは単独行政理論を広めている。これは、1787年に書かれた合衆国憲法が、行政権に関する第2条で大統領にしか言及していないという事実から着想を得ている。 そのため、この理論の支持者は、憲法上行政権を行使する権限を持つのは大統領だけだと主張する。 したがって、政府機関の職員はすべて大統領の命令に従わなければならない、と(なお、トランプの大統領令・布告などの一覧表はここから読める)。

    1月20日の「トランプ2.0」の発進」にあたり、映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』の感想を簡単に書いた。トランプ流「3つルール」のトップには「攻撃(attack) 、攻撃(attack)、攻撃(attack)」がある。「非を認めず全否定せよ」、これが2つ目のルール。3つ目は、「どれだけ劣勢に立たされても勝利を主張しろ」、である。「攻撃、攻撃、攻撃」のアグレッシブな言動で、人々は黙ってしまう。一方、マスクの口癖は、「削除(delete)、削除(delete)、削除(delete)」である(「チェンソー男 マスクの恨みと怒り」『文藝春秋』5月号131頁)。中国への高関税に対して消極的な姿勢を示したマスクの出番は、4月に入って急速に減った。むしろ、マスク退陣の可能性がささやかれている。トランプは自分に従わない、あるいは役に立たないとみるや、即決で「ファイヤー」(首だ!) である。マスクが振り回したチェンソーがマスク自身の首もとに向かうのも時間の問題かもしれない。

【文中敬称略】

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「アシアナから」:カブールの職業訓練施設の一少年

Dieses Spielzeug wurde aus der Aschiana-Schule,
Kabul geschickt.

――「アシアナから」――

2002年のカブールの職業訓練施設で一少年が作った木製玩具。
肉挽器の上から兵器を入れると鉛筆やシャベルなどに変わる。
「武具を文具へ」。
平和的転換への思いは、いつの時代も同じです。
詳しくは、直言「わが歴史グッズのはなし(6)アフガニスタン」参照

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