マイナンバーカードは「日本人の在留カード」に?――ある外国人留学生の意見
2023年7月10日

 

7.8事件」から1

倍晋三が殺害されてから1年が経過した。私にとっての最初のコメントは、3日後にアップした直言「安倍晋三銃撃事件」だった。10日後に、直言「「7.8事件」は日本の「9.11」か」を出して、「安倍政権の闇と膿」を論じた。ここでは、統一教会との関係が死につながった可能性があることから、戦後政治における統一教会の役割について触れた。直言「「反社勢力」に乗っ取られた日本(その2)」は、それを掘り下げたものである。先週の『朝日新聞』202376日付(デジタル) は、2012年、安倍の再登板に向けた「高尾山登山組」のなかに、勝共連合(統一教会)の最高幹部が含まれており、その人物にインタビューした記事を掲載している。安倍政権の「影と闇」、その「悪行と悪業」について執拗に書いてきたが、自民党の最大派閥の心臓(Herz)が消えて、この1年、小粒な政治屋たちが跳梁跋扈して、政権の軸が定まらないまま、これまでの政策が野放図に転換されている。安倍が首相時代に強引に進めた政策の一つがマイナンバーカードだったが、これもいま、迷走と混乱の極致にある。


安倍の落とし子、マイナンバーカード

   安倍政権下の20161月にマイナンバーカードの交付が始まった。当初は任意だったものが、2019年に、健康保険証として利用する、デジタル行政手続を進める、戸籍事務と連動させるということで、3つの法律が成立した。この安倍政権時代に打ち出された健康保険証としての利用が、いま、岸田文雄政権のもとで迷走している。

   カードをもっている国民は、7年もかけて、ポイントで釣っても、まだ77.3%である(7月2日現在) 。国民の4分の1近くがカードから距離をとっている。私は最後の最後までとらないつもりである。ただ最近、空気が変わってきた。「返納運動」が始まったからである。すでに約45万枚に達しているという。「みんなとるから」「ポイントが魅力」という人々を横目で見ながら、かなり身近で、高齢のため身分証明のつもりでとったという人から直接話を聞いたが、自治体の職員は、「引き出しの奥にしっかりしまっておいてください」とアドバイスしたという。2026年に新しいカードになることが喧伝されている。このカードのいいかげんさは、行政の現場でも見抜かれているということだろう。

  冒頭左の写真をご覧いただきたい。マイナンバーカード絡みの不祥事が連日報道されている。夕刊紙(『日刊ゲンダイ』)などは特大の見出しで、マイナンバーカードとデジタル大臣の河野太郎を激しく叩いている。河野の「自己愛」暴走性についてはこの「直言」でも何度か書いてきた(例えば、防衛大臣時代は、直言「イージス・アショアの「もったいない」(その2・完)」、ワクチン大臣の時は、直言「パラリンピックは中止すべきである」参照)。国会でも、野党から、「ほとんど河野太郎が問題だ」とまでいわれている。公金受取口座に別人の預貯金口座が登録されていたり、マイナンバーカードをコンビニで使ったら、別人の住民票が交付されたり、健康保険証や年金情報の紐付けミスで、他人の医療情報が閲覧可能になっていたりとか、信頼性は地に落ちている。それでも、政府がこれに固執するのはなぜか。国民のためでないことだけははっきりしている(背景については、ここから)。とうとう独立行政委員会である個人情報保護委員会が、マイナンバーカードを所管するデジタル庁に対して、立ち入り検査を実施することになった。『朝日新聞』77日付がいち早く一面トップで報じた(冒頭写真左の真ん中)。人事院にしても、国家公安委員会にしても、独立性と中立性をもっているはずの行政委員会が、安倍・菅政権のもとでは過度な「官邸忖度」が目立った。その意味で、今回の個人情報保護委員会の動きは、まだ断言はできる段階にはないが、まっとうな動きとして見ていいかもしれない。

  実は最近知ったことなのだが、マイナンバーカードの問題性として、外国人留学生の問題がある。たまたま一留学生から聞いた話で、正直びっくりした。5年間に4回も更新した友人の話、更新手続の煩雑さで、研究活動にも支障が出ている。在留カードの更新も大変なのに、マイナンバーカードのそれも加わり、留学生の区役所通いの負担がここまで大きいことを初めて知った。早急な改善が求められる。

  ここで、日本で研究に励んでいる一大学院生に、この「直言」のために寄稿してもらった。写真とその加工はすべて彼のオリジナルである。お読みいただければわかるが、彼が在留カードの更新に加えて、マイナンバーカードの手続をめぐって苦労している様子がよくわかる。河野大臣は留学生の負担についてはおそらくご存じないだろう。しかし、留学生の負担を減らすことは可能だと思う。このレポートを読んで、関係方面でぜひ検討していただきたい。「マイナンバーカードなんか持たない」と私ならいえるが、在留カードを人質にとられている留学生にはそれはいえない。

  それにしても、彼のレポートの最後の文章は不気味である。いつか日本人にマイナンバーカードの所持義務が課せられるのではないかというのである。そのとき、マイナンバーカードは日本人の日本「在留」カードになる、と。これを聞いた別の院生が、「先生、石ノ森章太郎(連載当時は石森章太郎)の連載漫画『仮面ライダー』をご存じですか。」と聞いてきたその最終話で悪の組織ショッカーが進めていた「ロボット国家化計画」こそ、まさに個人番号による日本国民の効率的な支配・管理を目指すものだった。さらに、「この計画は、もともとは日本政府の主導によるものだ」と暴露される。「お前たちの選んだ政府を、我々〔ショッカー〕が利用させてもらったのだ」という台詞には、ギクッとさせられる(最終話「仮面の世界(マスカーワールド)」『少年マガジン』1971年42-53号)。

   以下、留学生のレポートを掲載することにしよう。

 

マイナンバーカード制度の問題性

――留学生の2枚目の在留カード? 日本人の在留カード?――


今年は私が留学生という身分で日本に入国して6年目になる。入国した瞬間からずっと身につけ続けたのは母からもらった手紙あるいはお守りではなく、「在留カード」と後に取得した「マイナンバーカード 」だった。

日本で生活し、学ぶ外国人留学生にとって、在留カードは何にまして大切なものである。それと同時に、マイナンバーカードもまた6年間、頻繁に重荷と感じてきた。

 

在留カードの所持義務

日本の外国人を管理する制度(在留管理制度)は、在留状況を継続的に把握し、適正な在留の確保に資するように外国人に在留カードを交付している。それに加えて、出入国管理及び難民認定法に基づき、留学生は、日本で生活し、学ぶ際に在留カードを常に所持しなければならない。私は大学院生として勉学する今はもちろん、学部時代でも夜遅くまで勉強し、夜中にお腹が空いてコンビニに買い物に行くパターンがかなり多かった。でも、部屋から出る直前に、所持金の確認よりも、在留カードを持っているかどうかを確認してから外出した。お金を忘れると買い物ができなくなるだけだが、在留カードを所持しなかった場合は刑事罰に問われる可能性があるからである。だから、常に在留カードの「安否確認」を行うように心がけている。


引越しとマイナンバーカード

マイナンバーカードを外国人も取得することができる。むしろ、取得すべきものと認識していたため、制度の開始が間もない時期にそれを取得し、使い続けている。しかし、そこで様々な不便、やるべきことが多くなった気がした。

まず、引越しする際には転出・転入手続以外に、マイナンバーカードに記載される住所の変更手続もしなければならなくなった。いつも混み合っている区役所で更なる時間がかかってしまう。それに加えて、在留カードを所持している外国人だから、在留カードに記載されている住所の変更は必ず行わなければならない。

 

在留更新とマイナンバーカード

日本人がマイナンバーカードを発行すると、発行した時点で未成年であればカードの有効期限5年となり、成人の場合は10年となる。期限が近づくと「有効期限通知書」が家に届くらしい。また、カードの有効期限とは別に「電子証明書」の有効期限がある。

ところで、外国人のマイナンバーカードの有効期限は、在留カードの有効期限と一致している。在留カードの期限が切れると同時にマイナンバーカードの有効期限も切れる。そこで、永住権を持つ外国人以外に、日本でさまざまな在留活動を行う外国人にとって、マイナンバーカードの期限が非常に短く、頻繁に更新手続を行わなければならない。さらに、外国人には「有効期限通知書」が届くことはない。これについてはどこにも解説が見当たらない。つい最近のマイナンバーカード更新の経験によって初めて知った次第である。

留学生として来日した6年前から在留カードは2回更新した。マイナンバーカードについては、1回の取得手続+2回の有効期限更新+1回の券面記載事項の変更(住所変更)、合計4回の手続きを行い、非常に疲労感を覚えた。本音をいうと、これらの手続はかなり時間と手間がかかって研究時間を奪ったりすることもある。在留期限までの3ヶ月前から(3ヶ月前から在留更新が可能だが、期限内であればいつでも更新を申請可能、更新手続の審査中は2ヶ月の猶予期間がある)学校側の作成する書類と自分で作成する書類を整えて、入管に行って手続を行う。

それにもかかわらず、マイナンバーカードが一度期限を過ぎるとその瞬間で失効し、それに付随している機能が全部使えなくなり、1000円を払って再発行し、再交付を待たなければならないため、すぐに住んでいる地域の区役所に行ってマイナンバーカードの有効期限を更新しなければならない。マイナンバーカード関連の手続は、私のような留学生にとって、非常に負担になっている。

具体的には、3ヶ月前から授業時間とかぶらないように、時間を調整して朝早く所管の入管に行って準備した書類を提出し、在留更新申請を行う(待ち時間:3時間〜)。その後は、速やかに学業に戻る。その後、在留更新審査期間(通常、2週間から1ヶ月の更新審査が行われ、状況によって更なる時間を必要とする場合もある)を待ち、許可が降りてから通知のハガキが郵送で届いたその日に所管の出入国管理局にもう一度行って新しい在留カードを受け取り(同じく待ち時間:3時間〜)、速やかに区役所に行ってマイナンバーカードの有効期限を更新しなければならない。朝8時に出発して手続を行ったとしても、書類を受け付けてもらうのがどうしても夕方ぐらいになる。入管と区役所での待ち時間と移動に必要な時間を考慮すれば、かなり大変な1日と言ってもよいだろう。

私は未成年の時から日本に留学し、学校生活を送ってきた。日本のあらゆるルールに従い、常に果たすべき義務を果たすように努力している。つい最近、私の在留期限が近づき、期限が切れる3ヶ月前から更新手続を行なった(書類を準備したのはさらに早い段階)。

そこで、前述の手順を踏まえて新しい在留カードを受け取った後に、学業の忙しい時期であるが、行うべき手続をきちんと行おうとし、区役所に行ってマイナンバーカードの期限更新を行おうとしたが、それがどうにもうまくいかなかった。

最初に直面したのは「更新はできないが、再発行はできる」という状況だった。なるほど、期限内だとしても更新できないのだ。区役所の係員の説明によると、未成年の時期に申請したマイナンバーカードは日本人、外国人を問わず、5年後には再発行しなければならないからだ。その旨を理解し、再発行の手続を行うとしたら、オンラインで申請するようにお進められた。しかし、名前が東アジア諸国の主流な「姓+名」という構造ではなく、いわゆる「ワンネーム」(名前しかない)だったので、それにシステムが対応していないことを恐れて、申請書および返信用の封筒を受け取った。天気が暑すぎるせいか、かなりの疲労感を感じて帰宅した。

帰宅して再発行書類を記入しようとしたら、次の問題に直面した。帰宅して間もなく、区役所から電話がかかってきて、「マイナンバーカードの有効期限を新しい在留カードの有効期限まで更新できないが、今年の誕生日までは延長できます。今日、もう一回〇〇区役所までお越しいただきますか。あるいは、マイナンバーカードの有効期限内にもう一度〇〇区役所までお越しいただきますか。」というのである。

そういうことか。先ほどの区役所での対応が間違っていたのか。日本人の場合、つまり制度設計上は、未成年の時期でマイナンバーカードを取得した場合の有効期限は、その5年後の誕生日の日までということで、私は今回在留更新が認められたため(その期限が今回の誕生日以降)、誕生日までの極めて短い期間だが、更新は一応可能だったにもかかわらず、再発行手続を行う旨を告げられたのが区役所のミスだったので、電話がかかってきたわけか…。もう、かなり疲れてきたが、史上最短マイナンバーカードの期間更新とも言ってよい手続を後日行った。

今年の誕生日以降にマイナンバーカードを使い続けたいのであれば、5回目の手続(更新、再発行)を行わなければならない(書類を記入して郵送ハガキが届く区役所に行って受け取る)。

ところで、マイナンバーカードの制度設計上は、「電子証明書の有効期限」の更新が1回のみと想定していることがわかる。なぜならば、「電子証明書の有効期限」の更新した日付を示すところは区役所が手書で期限を書くような形になっていて、2回目の修正が不可能になっているからだ。

したがって、今回は「電子証明書の有効期限」と「マイナンバーカードの有効期限」両方を更新したにもかかわらず、「電子証明書の有効期限」の欄をみると、まるで更新されていないようにも見える。何回も区役所に行ったあげく、このような中途半端な結果はどうにも納得いかない。

さらに、マイナンバーカードの表面の変更した住所と新たな有効期限の記入欄も今回をもっていっぱいになった(私の黒塗りのカード写真参照)。仮に私が1回でも多く引越ししていたら、記入されるスペースがなくなり、結局どういう対応になるだろう。

これらの事項を考えていたら、何だか悲しくなってきた。また、マイナンバーカード再発行の申請書を記入しないといけない。新しいマイナンバーカードを受け取るのは3ヶ月後になるけど…。

マイナンバーカードと健康保険証

「外国人を対象として、その在留状況を継続的に把握…」されているため、留学生の健康保険証の有効期限も在留期限とほぼ同様となる。

しかし、今回の在留更新を行った後に新しく届いた保険証の有効期限を見てかなりびっくりした。保険料の滞納が一切ないにもかかわらず、有効期限が1ヶ月未満(26! )のものが届いたからだ(右の写真参照)

区役所によると、在留更新を行ったことを承知したため、期限の長い保険証が後から届くと言われた。ひとまず安心したが、なんか違和感を覚えた。マイナンバーカードの健康保険証利用のことだ。マイナンバーカードを健康保険証として利用し、普通の健康保険証が廃止されていたら、マイナンバーカードのない期間(更新、再交付を申請している期間)で、少なくとも1ヶ月の間に健康保険証のない状態で生活しなければならない。不運にも病気にかかったら、医療費の全額負担になり、普段は文献資料のコピー代も節約している院生にとっては、どうにも安心できない状態が続く。病気にならないように日々は体調管理に気をつけているが、保険証のない時期に病気にならない自信はなく、不安が胸の奥でじっと淀む。


5
年間に4回在留更新した友人

私は友人と比べれば運がよく、6年に2回しか在留更新、マイナンバー更新を行わなかった。しかし、友人は5年間に4回の在留更新を行っているため、マイナンバーカードの制度がまるでふざけているようにも思われる。5年間でたまったカードの束をご覧ください(左の写真参照)。今年でもう一枚増えそうだ(5回目の更新)。

この人が最初はマイナンバーカードを申請し、取得したが、カードを発行する3ヶ月の待ち時間を除けば、実質的な有効期限は9ヶ月しかない。しかも、在留更新を行うたびにマイナンバーカードの有効期限の更新手続を行わなければならない。それに疲れて、最終的にはマイナンバーカードの利用を諦めた。

当時は期限切れのマイナンバーカードを持って区役所にいって更新手続を行おうとしたら、3ヶ月後に届く旨を告げられ、その場で諦めると伝えたら、期限切れのマイナンバーカードを区役所によって回収された。

なぜマイナンバーカードの期限が切れる前に行かないのかと言われるかもしれないが、そもそも外国人には「有効期限通知書」が届かない。在留更新との関係で手続する時間が非常に厳しく、普段あまり使用しないマイナンバーカードの期限を常に意識する義務は存在するだろうか。仮にあるとしたら、9ヶ月を一区切りとしてこの手続を行う意味はどこにあるのだろうか。

本当に生活が便利になったかというと、私の答えは否定的である。マイナンバーカードがまるで2枚目の在留カードになり、やるべきこと、心配すること、不安な気持ちが増えただけと、つい思ってしまう。


いずれ日本人の日本「在留カード」になる?

現段階ではマイナンバーカードがあれば、住民票をコンビニで簡単に取れる、手続がうまく進む、メリットがいっぱいと考えるのは果たして正しいか。

今後日本国民だけでなく、すべての日本で生活している人が必ずマイナンバーカードを取得しなければならなくなったら、どうなるかを考えてみよう。

たとえば、健康保険証だけでなく、在留カードとマイナンバーカードも一体化し、在留カードの所持義務が「マイナンバーカードの所持義務」になる。別に大した問題ないと思われるかもしれないが、本当にそうだろうか。現在の在留カードは合法で日本に在留する外国人のみが所持できる、所持しなければならないカードだが、それがマイナンバーカードに変わると日本国民も所持できるカードとなる。その時に、「職務質問の便宜上」、「安全な社会のため」など、様々な理由を伴って、実質的に所持義務を課す可能性はないとはいえないだろう。

そうなった場合に、マイナンバーカードが事実上、日本人の「在留」カードになるのではないか。

トップページへ