欠陥機「オスプレイ」が象徴するこの国の「安全」――「安保3文書」から1年
2023年12月18日

高い、能力的に難、危険の三拍子揃った欠陥機

1年前の1216日、岸田文雄内閣は「安保3文書」(部内では「戦略3文書」という)を閣議決定した(直言「「12.16閣議決定」「戦」と「時代の転換」」参照)。臨時国会の閉会を待つかのように、どこまでも「議論させない」という、まさに馬耳東風の姿勢が貫かれていた。そうしたなか、この政権の安全保障政策の「ちぐはぐ感」を象徴しているのが「トマホーク」400発の導入であるが、さらに明確にそれを象徴しているのが垂直離着陸機オスプレイ(Osprey)だろう(空軍CV-22、海兵隊MV-22、海軍CMV-22)。高い、能力的に難(後述)、危険の三拍子揃った、とんでもない代物がこの10年の間に米軍基地に配備され、自衛隊にも導入されている。20231129日、鹿児島県屋久島沖に米空軍のCV-22が墜落した。この事故によって、「危険」の面がかつてないほどに注目されるに至った。
   思えば7年前の20161213日、普天間基地所属のMV-22オスプレイが名護市沖に「不時着」して大破した 稲田朋美防衛大臣(当時)は、「自発的に着水したと聞いている。墜落ではない」と記者会見で語ったが、写真を見るとまさに大破であった。今回も木原稔防衛大臣は当初は「不時着水」と国会で答弁していたが、米軍はすぐに「墜落」と発表してしまい、過度な忖度が見えてしまった(『朝日新聞』121日付)。

オスプレイ・グッズから見えるもの

私は16年前、直言「二つの“22”とニッポン」を出して、米軍のF-22戦闘機とMV-22オスプレイに注目した。そして、ネットオークションで「オスプレイ」と入力して、ヒットしたものをすべて落札した。まだ日本の自衛隊が保有するかどうか決めていない段階で、プラモデルの世界では「日の丸オスプレイ」が売られており、それも入手した(直言「任務遂行射撃と「関東軍的思考」」の冒頭写真参照)

20125月、オスプレイの沖縄配備の動きが本格化すると、沖縄は猛反発した。すぐに直言「魚を食う鷹―オスプレイ沖縄配備の思想」)をアップした。この頃はオスプレイのボールペンや3Dパズルも入手した。これらの「オスプレイ・グッズ」を箱に入れ、2012617日付『沖縄タイムス』特報(号外)を添えて研究室に保存しておいた。前述した1129日の事故が起きると、この箱を探し出して、事故の記事と一緒に撮影した。それが冒頭の写真である。「未亡人製造機」と酷評されるオスプレイは、今回も8人の命を奪った。

オスプレイが危険なのは、自然の法則に反した設計になっているからである。最大500キロ近い速度で水平に飛行しながら、目標上空にくるとローターを垂直に変換してヘリコプターのように着陸する。先月の事故も、「飛行モード」から「ヘリモード」に移行する「転換モード」で起きたようである。目撃していた釣り客によると、「急に、機体の左側が上になる横回転で180度ひっくり返り、背面飛行の形になった。左側のプロペラ辺りが爆発し、火が出た。プロペラは遠くに吹っ飛び、機体が海に落ちていった」(『東京新聞』126日付「こちら特報部」)。

オスプレイの運用思想

20125月に米軍が沖縄へのオスプレイ配備を始めると、沖縄は猛反発した。冒頭の下の写真は前述した『沖縄タイムス』号外(「特報」)である。普天間配備は、住宅密集地に墜落のリスクの高い飛行機を配備することになり、反対集会では「沖縄は無人島ではありません」というスローガンも掲げられ、県民の怒りは大きかった(直言「日米安保を揺るがすオスプレイ」参照)。オスプレイは緊急展開部隊としての海兵隊が重宝がる装備とされる。前掲「直言」にこう書いた。

「…オスプレイ1機で24人の兵員を運べる。155ミリ榴弾砲を吊り下げたまま飛行できる。従来のヘリによる空中機動作戦では迫撃砲程度だったものが、重火器を組み合わせた作戦が可能となった。海兵1個大隊(975人)を75海里(約140キロ)離れたところに一定の重火器を含めて展開するには、オスプレイ1個飛行隊(12機)の4回飛行、3時間で可能という。地上基地からだけでなく、空母部隊との連携で運用すれば、どこの地域にも緊急展開できる。その意味で、単なる輸送機が配備されるのではない。海兵遠征軍の殴り込み能力が格段に強化されるという意味での「危なさ」である。…

直言「メディアは沖縄をどう伝えてきたか―普天間のオスプレイ(1) では、沖縄の地元紙を使って、この「欠陥機を人口密集地域の普天間飛行場に配備することは、普通人の感覚からすればあり得ない選択である。「本当に安全な機種なら、日比谷公園か、新宿御苑に」とは仲井真弘多沖縄県知事の言葉である」と書いた。なお、沖縄講演のあとに普天間基地周辺などを取材して書いた直言「日米両国政府の想定外―普天間のオスプレイ(2・完)」も参照されたい。

 

「陳腐化」したオスプレイを配備する日本

防衛省が退役前の装備を「陳腐化」と称していることはすでに紹介した(直言「「陳腐化」した兵器をウクライナに?」)。実は、オスプレイの新規調達が終了することが128日までに明らかになった(『沖縄タイムス』2023129日付)。これは驚きである。『沖縄タイムス』によれば、機体の不具合や事故の多発などで米国外からの調達数が伸びなかったことが影響しているという。オスプレイは米軍全体で計464機運用している(海兵隊MV22360機、空軍CV2256機、海軍CMV2248機)。「米下院は24年度予算案に海軍用のオスプレイの新規調達費を盛り込んでいるが、米上院の複数の有力議員らは[12月]7日、本紙[沖縄タイムス]の取材に対し、死者を伴う墜落事故が頻発していることから否定的な見方を示した」という。あのイスラエルも導入に前向きだったが、単価で19000万ドル(約130億円)と高価なこともあって(+事故多発のネガティヴ要素)、日本だけが17機購入したにとどまった。126日、米軍は、世界に配備しているすべてのオスプレイの飛行を停止した。これは、機体に重大な欠陥があることが自覚されたからではないか。
  日本では、佐賀空港(1度使ったが、利用客少なし)に17機配備される予定だが、それまで千葉県の陸自木更津駐屯地に14機が暫定配備されている。この欠陥機の導入のために3600億円を超える税金が使われている。災害派遣にも使えるというのは安易すぎる。東日本大震災のときに「トモダチ作戦」で一部使われたが、風圧が大きすぎて役に立たなかったようだ。『産経新聞』だけが「活躍ぶり」をアピールしたが、他の新聞はベタ記事扱いだった。

能力的に難があるオスプレイ

『デイリー新潮』1213に、「“未亡人製造器”オスプレイに米軍が見切り…自衛隊からは「扱いづらい」と不評、それでも今後17機に増やす予定」という記事が掲載された。それによると、オスプレイは海兵隊だけが満足して、陸軍には不満が残っているという(ハンヴィーの搭載不可など)。自衛隊も運用しているが、現場の隊員からは「扱いづらいですよ」という本音が聞こえてくるという。前述のように、米軍が全世界に配備しているすべてのオスプレイの飛行を停止したということは、オスプレイに重大な欠陥があることを示唆している。自衛隊は計14機のオスプレイを保有している。今後、3機を追加し、17機になる。だが、オスプレイはすでに「陳腐化」しており、残りの導入を中止すべきだろう。


「安保3文書」(「戦略3文書」)の1

 1年前に閣議決定された「安保3文書」に基づき、ミサイルや各種装備の前倒しの導入が進んでいる。自衛隊の運用思想も、「敵基地攻撃能力」(「反撃能力」)を軸に、「事前」「予防的」「先制的」傾きと勢いを強めている。「専守防衛」は単なるお題目として扱われ、「自衛のための必要最小限度」概念が装備体系や装備導入に果たしてきた歯止めの役割も消失しつつある(直言「大日本帝国も「自衛のための必要最小限度」?参照)。
    大軍拡に向かうこの国について、もし石橋湛山が知ったら何というだろうか。ここで、自由民主党第2代総裁、内閣総理大臣だった石橋の言葉を引用しておこう。
     「わが国の独立と安全を守るために、軍備の拡張という国力を消耗するような考えでいったら、国力を全うすることができないばかりでなく、国を滅ぼす。したがって、そういう考え方をもった政治家に政治を託するわけにはいかない。」(松尾尊兊編『石橋湛山評論集』(岩波文庫、1984)282)

《付記》 今週の「直言ニュース」は都合によりお休みします。


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