10年ぶりに「年のはじめに武器の話」(その2・完)             2014年1月13日

オスプレイ

き続き「年のはじめに武器の話」だが、前回は「武器」を求め、それを使う「人」の話が中心だった。今回は本筋である「武器の話」である。なお、前回は失念していたが、実は、年頭ではなく、新年2回目の「直言」に「年のはじめに武器の話」を副題に入れてアップしたことが過去にあった。それが2008年1月14日の直言「兵器の名前から見えるもの――年のはじめに武器の話(その3)」である。したがって、厳密に言うと、このタイトルでは通算5回目ということになる。細かいことだが、付け加えておきたい。

昨年12月17日、新たな「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」(2014〜2018年)が閣議決定された。そのコンセプトは「3自衛隊によるさらに機動的な統合運用を推進する『統合機動防衛力』を柱に、質・量を重視し、メリハリの効いた防衛力の構築を目指す」というものである(『朝雲』2013年12月19日付)。

防衛計画の大綱

「統合機動防衛力」というのは、民主党時代に策定された2010年「大綱」の「動的防衛力」よりも、さらに先制的・前方展開的性格を強めている。これに照応して、組織や装備の面でも、従来の防衛構想や計画の枠を超えるものが、あっけらかんと書き連ねられている。例えば、『朝日新聞』12月14日付夕刊一面には、「無人偵察機3機導入へ」「オスプレイ17機も」という見出しのもと、目立つ装備メニューが写真入りで並べてある。住友重機が機関銃の試験データを改ざんして、1000丁以上を防衛省に納入していた事実を報ずる社会部ネタをそのすぐ横に持ってきたのは、夕刊当番デスクの見識だろう。

かつてなら、一つの装備・兵器の導入だけでも一内閣を必要としたほどのものが、ズラリと並んでいる。まずはオスプレイ。これを日本国民の税金で購入するとは何事だろうか。国民の「忘却力」メディアの飽きっぽさに便乗して、米国で「未亡人製造機」と酷評されるほど安全性に著しい欠陥のあるティルトローター〔垂直離着陸〕機を、しかもその運用思想に関するきちんとした議論をすることなく、17機も購入するとは驚きである。この点に関して、国会の予算委員会でのまともな議論を聞いた記憶がない。「尖閣諸島に対する中国の脅威」という一般論の前に思考停止しているとしか思えない。オスプレイを日本が保有することの意味は、実は自衛隊の本質の変化にも関わる重要な問題を内在している。それは、「どう見ても空母だけど」と誰しもが思う護衛艦「いずも」(22DDH)との関係でも重要な問題を含む(『朝日新聞』2014年1月7日付第3社会面)。ネット上に拡散している写真を見ても、6年前の「直言」で触れた護衛艦「ひゅうが」(16DDH)よりも一まわり以上大きい。これにオスプレイを搭載して運用することも可能だろう(7年前の直言で、「日の丸オスプレイ」の模型を使って予測している)。なお、将来、上甲板を改修すれば垂直離着陸機(VSTOL)のF35B戦闘機の搭載も視野に入ってくるだろう。その活動区域は「日本周辺」に限られない。

装備面で注目される2つ目は、水陸両用車52両の導入である。海兵隊の通常装備である米国製のAAV(水陸両用強襲輸送車)を念頭においたものというから、最初に結論ありきである。これは輸送艦「おおすみ」などに積載されている高速揚陸艇LCAC(ホバークラフト)とは運用思想が異なり、人員・物資の輸送だけが目的ではない。上陸後も装甲車として地上戦を展開することができる(重機関銃と自動擲弾銃で武装)。このような「水陸両用強襲輸送車」を用いた作戦とはいかなるものなのか。もっぱら尖閣諸島「防衛」しか言われていないが、果たしてそれだけなのか。この車両の保有により「海兵隊的機能」が期待されている。新大綱では、基幹部隊の見直しを行った結果、中央即応集団を「発展的に廃止」し、これを新たに編成される「陸上総隊」に編入するとともに、島嶼の「上陸・奪回・確保」の作戦を実施する「水陸機動団」1個を新編するとされている(『朝雲』前掲)。

この「水陸機動団」の運用思想は、「専守防衛」の枠内にとどまるものではないだろう。米海兵隊は米本土を守る「国防軍」ではなく、その活動の舞台は常に海外であって、米国以外の国への着上陸作戦を想定して訓練を行っている。日本がそうした上陸作戦能力をもつ「殴り込み部隊」を保有し、米海兵隊と連携して、地球のどこにでも展開できる能力をもつことは、自衛隊を合憲としてきた従来の政府解釈の「自衛のための必要最小限度」をもはるかに超えるものとなるだろう。

グローバルホーク

装備面で注目される3つ目は、高高度滞空型無人機3機の導入である。米国のRQ-4B「グローバルホーク」。1機25億円もする。三沢基地に配備される予定だが、司令部機能を整え、運用諸費用すべてをカウントすれば数百億円単位になるだろう(『朝日新聞』2013年9月5日付等)。

ドイツでは昨年9月の総選挙後、連立交渉が難航し、12月17日にまたもや大連立政権が発足した。デメジエール国防大臣の続投はなく、彼は新政権では内務大臣となった。デメジエールは昨年、「無人偵察機ユーロホーク」導入について失敗し、野党から厳しく責任を追及されていた。「無人機スキャンダル」である。この写真は『シュピーゲル』誌(2013年6月3日号)の表紙だが、前国防相が寂しげな表情で引いているのがユーロホークである。

ドイツ国防省はこの無人機開発に6億8000万ユーロ(約980億円)をかけた。だが、民間航空機が飛び交う欧州上空での飛行に必要な衝突防止装置が装備されておらず、他にも各種の技術的欠陥があって、欧州航空安全局からEU諸国上空の飛行許可が降りなかったため、計画は2013年5月に頓挫した。しかし、国防大臣は重大なリスクがあることを2011年末には知っていたにも関わらず、長期にわたってそれを座視し、税金を無駄に支出させたとして責任を追及された。国防相は、2012年5月以前は何も知らなかったという答弁をしたため、虚偽答弁だとして非難された。『シュピーゲル』誌の表紙に使われている文書は、2012年2月8日付の国防省内部文書の一部で「ユーロホークの件:見積もることのできない技術的、時間的、かつ財政的諸リスク」とある。ドイツの教訓をきちんと踏まえることなく、日本が米国製の「グローバルホーク」を購入することはきわめて安易である。しかし、世論もメディアも尖閣諸島の警戒監視という一言で思考停止している。百一歩譲って、監視活動のために有効だとしても、他の手段では不十分なのかどうか、費用対効果の問題も含めて国会の予算委員会で十分な議論が必要だろう。

無人機と言えば、米軍は、RQ-1「プレデター」による「ターゲット・キリング(標的殺害)」を実施している(直言「戦争の『無人化』と『民営化』)。もちろん日本ではまだこのタイプの導入の検討は表には出ていない。しかし、無人機を導入すれば、当初の偵察・警戒目的から、いずれは攻撃機能をつけたものも欲しくなる。これはおもちゃをほしがる子どもと同じ心象風景である。新大綱では「敵基地(策源地)攻撃能力」についても踏み込んだ記述が出てきた。先取り的に、『産経新聞』2014年1月3日付は、「敵基地攻撃」の最終局面で重要な役割を果たす「爆撃誘導員」の養成も始まると伝えている。米軍の「コンバット・コントローラー」(ヘリなどで最前線に進出し、攻撃目標の映像や情報をリアルタイムで航空機などに伝える)がモデルという。

以上、オスプレイ+ヘリ空母、水陸両用車、無人機などについて見てきた。これらは自衛隊合憲解釈の前提をなす「自衛のための必要最小限の実力」との圧倒的不整合をもたらすものである。

常備軍をもつと、なぜ軍備を常に拡大することになるのか。その本質問題をズバリ指摘したのはカントである。名著『永遠平和のために』の第三確定条項「常備軍は、時とともに全廃されなければならない」のなかでこう書いている。

「常備軍が刺戟となって、たがいに無制限な軍備の拡大を競うようになると、それに費やされる軍事費の増大で、ついには平和の方が短期の戦争よりもいっそう重荷となり、この重荷から逃れるために、常備軍そのものが先制攻撃の原因となるのである」(宇都宮芳明訳・岩波文庫、16-17頁)。

2014年は「第一次世界大戦100周年」である。日本は再び「列強」の仲間入りを果たすべく「普通の国」の「普通の軍隊」の道を歩むのだろうか。

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