わが歴史グッズの話(31)――訓練グッズ 2010年7月12日

議院選挙が終わった。今回の選挙にも、18歳、19歳の約245万人が投票できなかった。世界189国中、170カ国が18歳選挙権である。18歳選挙権がないのは、日本のほか、レバノン、チュニジア、マレーシアなど数えるほどしかない(『主要国の各種法定年齢――選挙権年齢・成人年齢引下げの経緯を中心に』国立国会図書館、2008年参照)。この5月に施行された憲法手続法は国民投票権者を18歳以上としているが、まだ法的措置がとられていない。18歳選挙権をめぐる議論は、 なぜか肝心の当事者に反対論が強い 。日本の18歳は、大人と子どもの間で中途半端な状態に置かれている。その状況に一矢むくいるべく、先週、 『18歳からはじめる憲法』(法律文化社)を出版した。最初から最後まで、「18歳」に向けて憲法を語りかけた。そうすることで、一般の人々にも、まだ有権者になっていない世代の視線で憲法を捉えなおしてもらおうというのが狙いである。

拙著のなかで詳しくは触れなかったが、18歳は実は徴兵適齢期でもある。世界には徴兵制をもつ国がなお存在している。ヨーロッパで数少ない徴兵制国のドイツも、この7月1日から、徴兵期間を9カ月から6カ月に短縮して、徴兵制廃止の方向に進んでいる。お隣の韓国では陸軍24カ月、海軍26カ月、空軍28カ月の重厚長大な徴兵制があるが、2014年から6カ月短縮される方向が決まっている。ただ、さまざまな事情からなお曲折が予想されている(『朝鮮日報』2010年7月5日付)。他方、志願兵制の国でも、 日本の自衛隊でも 、新兵(新隊員)の徴募は困難をきわめている。「就活」「婚活」と並んで、いずこでも、18歳に対する「募活」(募集活動)に余念がない。世界の徴兵制・志願兵制をめぐる状況については、回を改めて論ずることにしたい。

さて、今回は、 昨年11月以来の 「わが歴史グッズ」シリーズをお届けする。その31回目は、18歳で軍隊(自衛隊)に入営(入隊)した者が訓練で使用するグッズの数々である。 新兵の最も大事な訓練は、射撃訓練である。陸上自衛隊北部方面隊の某部隊(部隊名の上にダミー弾丸を乗せて撮影した)で実際に使われたもので、教官が鉛筆で書き込んだ注意が生々しい。

 

 

銃の撃ち方と同時に、手榴弾の投げ方も重要である。手榴弾は接近戦で使われるが、扱い方を誤ると味方にも損害が出る。確実に「敵」に向けて、安全な距離を保って投げられるかがポイントである。 戦前のものだが、「投擲」訓練のために開発された、本物とまったく同じ重さのゴム製手榴弾を入手した 。550グラムと、ずっしり重い。冒頭の写真の一番左側である(右二つは火薬を抜いた実物)。 上部には、優勝カップの絵と「美津濃 東京」の文字が入り 底部には「手榴弾體体力章検定規格」とある 。スポーツ用品のブランド「美津濃」は、戦前、手榴弾投擲検定用の規格品を製造していたのである。ゴム製にもかかわらず、実用的で重厚な作りは、さすが「ミズノ(MIZUNO)」だ。

これと比較して、 自衛隊の訓練用手榴弾(右側)はゴム製で貧弱である 米軍のものも、本物(左側)と比べて一見して軽い作りである 米軍の別の種類のものも、訓練用は、重さ・形状ともに重量感と存在感がない 。 なお、 私の「歴史グッズ」コレクションには各種の手榴弾がある 。 信楽焼きの陶器製手榴弾 は某民放のバラエティ番組(複数)から取材依頼がきたこともある。「わが歴史グッズ」は人の生死にかかわるもので、お笑い的な扱いにはなじまない。当然、お断りした。

 新兵の重要な訓練は、徒手格闘および銃剣術 である。 白兵戦(刃物を使った戦闘)は、現代の軍隊においても新兵訓練の必須項目である 。そのために使う、格闘訓練用のダガーナイフを入手した。ダガーナイフは殺傷能力の高い両刃のナイフである。写真のものはゴム製なので、問題はない。先端にチョークや塗料を付けて、格闘の最中に相手の体に触れたかどうかを確認するという。秋葉原での無差別殺傷事件でダガーナイフが使われたため、2008年銃刀法改正により所持罪が新設され、持っているだけで3 年以下または50万円以下の罰金となった。もちろん、この写真にあるものは訓練用のゴム製なのでご心配なく。

 

 この写真は米海兵隊の訓練用の9ミリ拳銃である。色彩は毒々しいが、形状と重量は本物と変わらない。830グラムでずっしり重く、銃把はボリューム感がある。自衛隊も同タイプのものを採用しているが、指揮官クラスの幹部や特定の職種(警務隊、戦車長、基地警備隊など)の隊員の装備だったが、近年では市街地戦闘訓練(対ゲリコマ)が重視されるようになると、一般隊員も装備するようになってきた。海外派遣部隊については、一般隊員が小銃だけでなく、拳銃も装備するようになった。部隊間の戦闘から、「テロリスト」や「ゲリラ」との接近戦を想定したもののようである。

 

  地雷について言えば 、対人地雷禁止条約を批准した日本は、 2003年2月に「対人地雷全廃国」になった 「わが歴史グッズ」のなかの67式対人地雷の演習用のものも「歴史的遺物」となった。 上記の写真の下にあるプラスチック製の訓練用対人地雷もお払い箱である。 だが、72式対戦車地雷 をはじめ、 対人地雷以外のタイプは現役である この訓練用のものはゴム製だが、かなりの重量感である。 なお、先週、7月9日付で、「クラスター弾禁止条約」がようやく官報に掲載され、条約第5 号として公布された(官報号外第145号・平成22年7月9日2〜7頁)。ずいぶんと時間がかかったものである。福田康夫首相が批准を決断し、公布は菅直人首相の名前で行われたこともここで紹介しておこう。

  クラスター弾という、一般市民を巻き込み、広範囲に被害を拡散させるおそれのある兵器の全廃に向けて、世界は確実に歩みはじめた 。「わが歴史グッズ」にはまだクラスター弾関係のものはないが(大型装備なので、まず入手は不可能)、いずれ何らかの資料類は入手したいと念じている。ちなみに、「外務省告示第329号」によれば、この条約は来月、8月1日に発効する(官報号外145号18頁)。

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